安倍政権は、安倍晋三首相が訪米から帰国する来週から、注目の日銀総裁・副総裁人事に着手するようだ。日銀総裁・副総裁は、衆参両議院の同意を得て内閣が任命する、いわゆる国会同意人事である。こうした形式のものは、日銀に限らず法令によって設置される行政機関の役職者の多くに採用されている。

 国会同意人事は、各省の委員会・審議会などの委員長、委員などが対象になることが多い。この国会同意人事では、衆議院の優越性がないので、あらかじめ衆参両院で同意を得なければいけない。2007年の参院選挙前には「衆参のねじれ」がなく、同意人事は問題のない事務的な手続きにすぎなかったが、衆参のねじれ以降は、参院の独自性発揮として同意人事は注目されている。

 安倍政権は、自公で衆院の3分の2以上を確保しているが、参院では少数だ。参院(総定数242)は欠員があるため現在236。通常議決に加わらない議長を除くと過半数は118。自公で102議席なので、同意人事案可決には16以上の賛同が必要。その場合は民主(87)か、みんな(12)・日本維新の会(3)・新党改革(2)との連携が必要である。

 ねじれが威力を発揮したのが、2008年3~4月の日銀総裁・副総裁の国会同意人事。自公政権が出した人事案を、再三にわたって民主党が多数を握っていた参院で否決して不同意にした。

「同意人事ルール」が存在した理由

 ねじれになった5年前の2007年、与野党は、国会同意人事が事前報道されたら、政府の国会提示を認めないとする「同意人事ルール」で合意していた。同意人事ルールは当時、参院を握っていた民主党が主導してつくられた。与党側、その裏にいる官僚が情報リークして、人事を既成事実化しようとするのを防ぐ意味があったとされている。要するに、このルールは、官僚がマスコミに地ならしして、官僚側に都合のいい人事をすることへの牽制であった。