日本が抱える
国際社会における「孤立リスク」とは

 これに対して、日本は今、中国の軍事力の急激な拡大、中国による台湾侵攻・尖閣諸島侵攻の懸念、北朝鮮の核・ミサイル開発という安全保障上の重大なリスクを抱えている。

 そうした状況下では、たとえウクライナ紛争の解決に向けた手段とはいえ、「力による一方的な現状変更」に屈する形での停戦や妥協案は絶対に容認しないという、揺るぎないスタンスを取らねばならない。

 もし、ウクライナの「現状のままでの停戦」「領土割譲の妥協案」を少しでも認めたら、中国が理屈をつけて台湾・尖閣に侵攻してくる可能性はゼロではない。だからこそ、日本はどの国よりも「ウクライナの徹底抗戦と領土の回復」を強く支持する「最強の硬派」であるべきなのだ。

 頼みの綱の欧米は、地理的に中国や北朝鮮から遠く、両国の軍事的な脅威にさらされるリスクは極めて低い。ウクライナ紛争が、ロシアの「力による一方的な現状変更」を容認する形で終結し、それが台湾有事を正当化する理屈を中国に与えることになっても、欧米には直接的な影響はないのだ。中でも米国は、台湾有事にどこまで関与する気があるのかは不透明だ(第310回)。

 その状況下で、国際世論が「和平」に傾き、日本が「徹底抗戦」を主張し続けたら、日本は国際社会で孤立しかねない。サミットで各国首脳は「平和で安定し、繁栄した世界」を実現するための議論を行ったようだが、これが国際社会の現実である。

 岸田首相本人は、衆議院の解散について「考えていない」と語っているようだ。だが、いずれにせよ「国際社会における孤立リスク」という「真の課題」への対応策を打ち出すことが、今後の岸田政権における喫緊の課題だといえる。