衆院解散説が浮上も
「サミット大成功」には疑問符

「世界の分断」の解消に向けては課題が山積している状況だが、ゼレンスキー大統領の来日を実現させたことで、G7広島サミットは成功したという印象が広がった。調査元によって差はあるが、低迷していた岸田文雄内閣の支持率も45~46%程度まで上昇したようだ。

 そして、これを絶好の機会と捉え、岸田首相が衆議院の解散総選挙に打って出るかもしれないという「解散風」が永田町に吹き始めた。

 だが、サミットは本当に成功だったのか。

 というのも、このサミットでウクライナが勝ち取った「追加の軍事支援」は、戦争を終結させる切り札にはならないだろう。

 これまでに北大西洋条約機構(NATO)の「三大戦車」など、さまざまな兵器・弾薬類がウクライナに供与されてきた(本連載第301回)。しかし、戦争は膠着(こうちゃく)状態に陥るだけで、ウクライナ側にとって戦況が好転することはなかった。

 ウクライナの正規軍はすでに壊滅状態にある。外国の武器を使って、外国の兵士が戦っているのが現実だ。さらなる軍事支援が行われても、その状況は大きく変わらないはずだ。

 こうした現状に鑑みると、米英などNATOはウクライナの領土奪還よりも、戦争を延々と継続させることを目的に、中途半端に関与しているように思える(第325回)。

 なぜ、彼らは戦争を長引かせようとするのか。その理由は、米英がこの戦争で被る損失が非常に少なく、得るものが大きいからだ。

 東西冷戦終結後の約30年間にわたり、NATOの勢力が東方に拡大してきたのは周知の通りだ。これに加え、ウクライナ戦争の開戦後、それまで中立を保ってきたスウェーデン・フィンランドがNATOへ加盟申請したことで、NATOはさらに勢力を伸ばしたといえる(第306回・p2)。

 今後ロシアがウクライナ全土を占領しても、「NATOの東方拡大」「ロシアの勢力縮小」という大きな構図は変わらない。世界的に見れば、ロシアはすでに敗北しているのだ。

 また、欧州のロシア産石油・天然ガス離れは確実に進み、米英の石油大手が欧州の石油・天然ガス市場を取り戻す野望は現実になりつつある(第325回・p3)。

 米英にとってのウクライナ紛争とは、20年以上にわたって強大な権力を保持し、難攻不落の権力者と思われたプーチン大統領を弱体化させ、あわよくば打倒できるかもしれない好機ともいえる。

 だから、ウクライナがすでに戦える状態にないにもかかわらず、戦争が延々と続けられているのだ。この状況について、ウクライナ国民の命が軽んじられている気がしてならない。