不動産所有者に不利益が多い
サブリース契約を解約できない理由

 売り手である原さんが驚いたのは、サブリース契約が法的によほどの正当事由がない限り解除できないという事実でした。裁判例を確認すると

・よほど切迫した理由がなければ不可
・自己使用の必要性のみを理由としたサブリース解除は相当困難
・契約書上の違約は、信頼関係の破壊に至るほどのひどいものでない限り解約不可

 という事実が判明します。弁護士の見解も同様で、サブリース物件の売却後、新たな買い手が解除することもできないのです。

 当然賃料も下がりますので、売却価格も下がります。売り手としては安い値段で売らざるを得ません。一方でサブリース契約を継続しても、築年数が古くなれば、家賃の下落、修繕費の増加で収支は悪化します。よって、経営の巧拙はもちろんありますが、それよりもサブリースがそもそもの不動産経営のボトルネックというケースが非常に多いのです。

 サブリース契約を取り交わすときは「一括借り上げで面倒なこともないですよ」という売り文句がよく言われるようです。しかし、そもそも建築コストも割高、賃料も10~20%中抜きされる、さらに途中で賃料が減額される、エアコンの交換や法定検査などでサブリース会社の利益を乗せて所有者に費用が請求される、かといって契約は解除できない、という泥沼に入り込んでしまうケースが少なくないのです。

 それほどまでに不利益なサブリース契約を法的に解除できない理由はなぜでしょうか。それは、借地借家法によりサブリース会社が守られているという背景があります。

 借地借家法は不動産の賃借人を守る法律で、通常は「所有者→実際の入居者(賃借人)」という関係なのですが、サブリース契約では「所有者→サブリース会社(賃借人兼転貸人)→実際の入居者(転借人)」という構図になります。

 借地借家法により、賃借人であるサブリース会社が守られ、所有者の立場が弱いという、おかしな状況になっているのです。

 一般に、消費者契約法などは個人と法人の関係で立場の弱い個人が守られるものですが、サブリース契約ではその逆で、法人が賃借人という立場に基づいて守られ、個人が賃貸人という立場に基づいて不利な立場になってしまっているのです。

 面倒な手間をサブリース会社にやってもらうということ自体は、「お客様の手間を解決する商売」として成り立つと思いますが、サブリース契約を一度結んでしまうと更新時も含めて半永久的に解除できません。たとえ解除条項があったとしても、借地借家法と判例によって解除ができず、契約関係が続いてしまうという「沼」なのです。これからサブリース契約をされる方は、そのリスクを認識して契約されるべきだと思います。