ヨーロッパ流のガーデニング技術を駆使した霊園・秋津ふれあいパークには、「バラの樹木葬」があるという。「花の下で眠りたい、という方も樹木葬を好む傾向がありますね」(太島氏)ヨーロッパ流のガーデニング技術を駆使した霊園・秋津ふれあいパークには、「バラの樹木葬」があるという。「花の下で眠りたい、という方も樹木葬を好む傾向がありますね」(太島氏) 画像提供:秋津ふれあいパーク

 個別に埋葬される個人墓だけでなく、夫婦、家族単位で同じ樹木葬に入る形式や、他人と同じ墓に入る集合墓の樹木葬もあり、自分の家庭に合った納骨方法が選べるという。

 そんな樹木葬が定義されたのは1999年。岩手県一関市にある「祥雲寺」という寺院が、樹木葬墓地として区画を分譲したのがはじまりだという。

「祥雲寺の樹木葬は、山をそのまま利用し、遺骨を埋めた場所に木を植える里山タイプの墓地だったと言われています。それから20年以上かけて、樹木葬が全国に浸透した背景には、お墓の“継承問題”が深く関わっています」

 先祖代々の墓を持つ家庭では、定期的に墓周りの清掃や管理をしなければならない。しかし、少子高齢化や核家族化、単身世帯の増加と地方の過疎化などが重なり、墓の管理を引き継げない、という課題が家庭内で発生している。

 そうした社会的背景から「樹木葬のような継承者不要のお墓が好まれるようになった」と太島氏は話す。

「お墓を購入する人の年齢層は、50代、60代、70代。実際に購入した人に話を聞くと、お墓を受け継ぐ子どもがいないケースだけでなく、子どもがいても『迷惑をかけたくない』という理由で購入を決める人も多くいます。じつは、樹木葬だけでなく、屋内のロッカーに遺骨を納める継承者不要の『納骨堂』というお墓の購入者も増えており、2022年の調査では一般墓の購入者数を納骨堂が上回りました」

 また、継承者の有無にかぎらず、地方から首都圏に出てきて定住している人が、地元の墓を閉じて、自宅近くの霊園に樹木葬を購入する場合もあるという。家族の在り方の変化が、墓の種類の多様化につながっているのだ。