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イクメン必読! 海外勢に押され気味だった
ベビーカー商戦が“国産回帰”に転じた理由

大来 俊
2013年2月28日
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幼児用品販売大手のアカチャンホンポの売場には、国産大手2社の商品がズラリと並ぶ。「赤ちゃんの乗り心地を重視するお客さんが多い」と、同社広報部は言う 振動レスシステム搭載ベビーカーを使う村田さん

 今、世の中は息の長い“イクメンブーム”の真っ只中だ。2010年頃から「イクメン」が流行語となり、ベネッセ次世代育成研究所による2011年11月の調査(2012年11月発表)では、夫の育児参加の頻度が増えていることが明らかになった。

 具体的には「子どもがぐずったとき落ち着かせる」を週に3回以上行う夫は47.3%と、5年前の調査に比べ14.9%も増加。「寝かしつける」(週3回以上)は30.7%(前回比8.3%増)、「おむつ替え・トイレ」(同)は58.2%(前回比7.3%増)と、いずれも増加傾向だ。

 NHKもイクメンを応援する幼児向け新番組『おとうさんといっしょ』(日曜朝8時)をBSプレミアムで4月から放送開始すると発表した。50年以上続く「おかあさんといっしょ」の姉妹番組として、イクメン向けに制作されるものだ。NHKによると、「子どもと父親が週末一緒に楽しめる番組」になるという。

 こうして、子どもと触れ合う機会が増えるトレンドのなか、イクメンも“子育てツール”への関心を高めていることだろう。たとえば代表的なツールであるベビーカー。2002年までベビーカー市場はコンビとアップリカという国内大手2社による寡占状態が続いていたが、2003年に英国のマクラーレン社が日本市場に参入。ファッション性の高さなどから人気が沸騰し、その後も海外メーカーの製品の進出が相次ぎ、国産メーカーは押され気味の展開が続いていた。

 しかし、最近になって、再び大手2社のベビーカーが消費者に見直され、売上が伸びる「国産回帰」現象が起こり始めている。キーワードは「赤ちゃん目線によるものづくり」だ。たとえば、コンビは独自の「振動レスシステム」を搭載したベビーカー「メチャカル ファーストα エッグショック」「ディアクラッセ オート4キャス エッグショック」を発売した。

 振動レスシステムとは、超衝撃吸収素材「エッグショック」やタイヤ側面に空気室を設け路面からの振動伝達を緩和する「大型エアセルクッションタイヤ」、路面からの振動を吸収する「4輪ソフトサスペンション」などで構成されるものだ。

 「顧客ニーズ調査で、ベビーカー選びで何を重視するかと問うと、『安全性』が常に上位となる。その安全性の中身を具体的に聞くと、『道の凹凸や段差からくる振動が気になる』という声が多く聞かれた。そこで従来以上に振動吸収性をブラッシュアップして製品化した」と、同社マーケティング室の藤平浩司氏は話す。

 さらに同社は、古賀良彦教授(杏林大学医学部精神神経科学教室)監修で、走行中のベビーカーでの赤ちゃんのストレス検証試験を実施。振動レスシステム搭載のベビーカーは、搭載していないものに比べて振動が約3割低減し、赤ちゃんへのストレスを4割低減させるという結果を得た(ストレスは唾液アミラーゼ値により測定)。

 ベビーカーの真のユーザーは父親でも母親でもなく、実は「赤ちゃん」である。その「声なき声」に着目し、ニーズを想定して、製品に落とし込む。日本メーカーならではの「きめ細やかな思いやり」と「高い技術力」がなせる職人技と言えるだろう。その赤ちゃん目線によるものづくりという新たな視点が、イクメンも含めたパパ・ママのハートをがっちり掴んだのである。実際に振動レスシステムを搭載したベビーカーは販売好調となり、昨年11月単月の出荷台数は2011年対比270%を達成した。

 ユーザー満足度も高いようだ。「ディアクラッセ オート4キャス エッグショック」を使っているイクメンの村田竜一さん(31)は、「ガタガタと揺さぶられている感じもなく、押しているこちらも安心して使える。何より子どもも乗り心地が良いせいか、ベビーカーに乗せてグズることが少なくなり、電車などでも気持ち良さそうに寝てくれることが嬉しい。我が家のお出かけの際の必需品」と話す。

 一方、アップリカもシート高が50cmと高い「ハイシート50」を採用した「ソラリア」「スティック」を販売。ハイシート50では、通常のシート高38cmのものに比べて大気中のほこりや排ガスなどの粒子の濃度が約1~2割低減し、表面温度も約2℃低くなることが実証されているという(表面温度は真夏日の場合)。これも、赤ちゃんからほこりや熱を遠ざける配慮がなされている、まさに赤ちゃん目線からつくられた製品であり、人気を博す。

 ファッション性では、確かに海外勢のほうが一歩リードしている感はある。だが、日本メーカーの強みを活かせば、それらにも十分に対抗でき、シェアを奪還できることを、今回のケースは証明した。他分野でも海外製品の勢いに押されることが多い昨今、迎え撃つ際の視点や考え方がわかる好例として、参考にしたいところだ。

(大来 俊/5時から作家塾(R)


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