東陽監査法人と仰星監査法人Photo by Yasuo Katatae

監査法人業界7位の東陽監査法人と同8位の仰星監査法人が、合併へ向けた協議を進めていることが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。他にも準大手や中堅規模の監査法人で合併や分裂の動きがあり、監査法人業界の再編機運は過去に例を見ないほど高まっている。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

東陽+仰星で業界5位の太陽を猛追
背景に会計士不足解消と採用力強化

 東陽監査法人は2022年6月末時点で監査顧客数282社を数え、売上高は46億4987万円(22年6月期)。公認会計士267人が在籍しており、上場企業では三菱瓦斯化学や企業のパブリック・リレーション業務代行を行うベクトル、岡三証券グループ、非上場企業ではINCJや産業革新投資機構などの監査を担っている。

 一方の仰星監査法人は監査顧客数267社、売上高は41億4446万円(同)。公認会計士の在籍数は153人で、上場企業ではコムシスホールディングスや熊谷組、西松建設などの監査を引き受けている。

 東陽と仰星の合併が実現すれば、売上高は単純合算で約88億円、在籍する公認会計士数は420人に達する。売上高では業界5位である太陽監査法人の142億2563億円には及ばないが、公認会計士数では太陽の383人を超える。

 両法人が合併を志向する最大の理由は、公認会計士の確保と、採用力の強化だ。

 11年のオリンパスや15年の東芝など、この15年間で日本を代表する上場企業の大規模な不正会計事件が相次いで発生し、資本市場を揺るがした。

 そこで金融庁と公認会計士・監査審査会(CPAAOB)は、監査の厳格化を進めてきた。その結果、監査工数は毎年のように増え、監査プロセスも複雑化。いきおい、多くの公認会計士が必要となり、ただでさえ問題となっていた会計士不足が、より深刻化していた。

 東陽と仰星は表向き、「合併は非常に重要かつ継続的な経営戦略である」、「組織の再編は常に検討している」と回答し、合併協議に関して明言を避けている。だが、東陽関係者は「以前からお互いにとって意中の相手で、具体的に協議を進めている」と明かす。東陽の佐山正則理事長も22年10月のダイヤモンド・オンラインのインタビューで、「合併に関してオープンに、前向きに考えている」と述べていた。

 金融庁は、前述した監査の厳格化を進めると同時に、準大手以下の監査法人に対しては同業他社と合併して大規模化し、それによる監査品質の向上と体制の強化も非公式に促してきた。今回の東陽と仰星の合併協議はそれに沿うもので、大手と準大手、中堅監査法人を交えた業界再編のトリガーとなり得る。

 実際、東陽と仰星以外にも、分裂や合流を模索する動きが表面化している。次ページでは他法人の再編の動きと、それらの動向を反映した最新の監査法人売上高ランキング、東陽と仰星の合併へ向けて残された課題について、詳しく解説していこう。