準大手監査法人である東陽監査法人の佐山正則理事長は、監査法人業界の序列が「4・1」(大手4法人と、それに次ぐ太陽監査法人の1)から準大手・中小監査法人の合併などで「4・2」へ、近い将来に変わると予想する。特集『会計士・税理士・社労士 経済3士業の豹変』(全19回)の#11では、その未来図を見据えた東陽の戦略について、佐山理事長に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 片田江康男)
10年間の中期経営計画が進行中
初期の構造改革にはめどを付けた
――東陽監査法人は準大手に分類されます。監査の品質をより高めるためには、優秀な会計士の確保など、リソースの拡充が急務かと思います。一方で、監査証明業務は若手会計士の人気がなく、コンサルティングなどの非監査証明業務に注目が集まっています。どのようにリソースの拡充を図っていきますか。
今、監査業界では大手4法人(四大)、それに続く準大手が5法人あります。つまり「4-5」です。ですが、実際には「4-1-4」。太陽有限責任監査法人さんは、準大手の中でも頭一つ抜けています。
私たちは採用を強化する中で、四大を辞めた優秀な方にも注目しているのですが、そうした方は「4-1-4」の“1”に行ってしまいます。
これは上場会社においてもそういう傾向があります。四大から監査法人を代える場合も“1”に代わることが多い。
私が理事長に就任したのが2018年8月。19年7月から29年6月までの10年間の中期経営計画が進行中です。10年間のうち、始めの4年間をトランスフォーメーションと位置付けて、非常勤の会計士の数を減らし、常勤の会計士の採用を強化しています。
18年度に総執務時間に占める非常勤の割合は37%でした。20年度には22%まで減らし、直近では15%程度まで減っています。
昔はインチャージ(監査意見を取りまとめる責任を持つ会計士)を非常勤が担っていた時代もありましたが、東陽ではインチャージは常勤だけ行うというルールで運用しています。
こうした構造改革を行っていたため、監査証明業務売上高が21年6月末は前年割れでした。22年6月期は構造改革のめどが付いたので前年を上回っています。
(ダイヤモンド編集部注:22年6月期監査証明業務売上高は前年比4.4%増の45億7441万円)
――競合と合併する監査法人も出てきていますが、リソースの拡充のために合併することについては、どうお考えでしょうか。
今、四大と準大手の差は10~20倍という非常に大きな差があります。もう少し準大手が、四大が引き受けられなかった企業の監査を担う受け皿になれた方がよいのだろうと思います。そのために将来、今の「4-1-4」が「4-2-3」になるような、激動期が来るのだろうと思っています。
準大手各社がこの数年、監査先を増やし、監査証明業務の売上高を伸ばす中で、構造改革を進めていた東陽監査法人。非常勤の会計士を減らす施策は、金融庁や公認会計士・監査審査会などからの指摘によって取り組んでいたというが、将来を見据えた別の狙いもあったようだ。
次ページから、東陽が見据える監査業界の将来像や、激動期だと認識している業界環境について、話を聞いた。