今後のビッグモーターの経営は予断を許さない。日本の中古車販売業は、都道府県公安委員会から「古物商」の許可が必要で、整備・修理・車検は国土交通省から指定や認証を受ける必要がある。さらに保険代理店としては金融庁に登録しなければならない(余談だが、中古車販売業界団体である日本中古自動車販売協会連合会〈JU中販連〉は「古物商」のイメージ脱却に向けて活動しており、数多くある自動車関連団体の中で最も政治力が強いと定評がある)。

 ビッグモーターは主体の中古車販売に加えそれぞれのビジネスを続けるには、行政担当からの登録や認可を継続しなければならないが、これだけの事態なだけに、そのハードルは高そうだ。

 日本国内の自動車業界の関連省庁は、産業としてメーカー関連を担当する経産省に加え、許認可などの権限を多く持つ国土交通省などがあるが、かつて情報通信分野への領域展開(CASEのつながるクルマへのステップ)では多くの省庁にまたがる縦割り行政のために、業界が苦労した経緯もある。今回も国交省や金融庁が事情聴取や立ち入り検査などを実施しているが、足並みはそろっておらず、事件の余波が報道などによって広がる中で後追いの感が否めない。

 昨今、トヨタ系ディーラーの車検不正問題などが相次いだ例もあり、ここでも「顧客不在」の構造を指摘する見方があった。ビッグモーターの例だけにとどまらず、自動車販売・整備業界には本来のお客さま第一という「おもてなし顧客」の原点に立ち戻ることが問われている。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)