殺人予告が頻発
自殺率は高止まり

 専門家らによれば、無差別殺傷事件が連続して起きる現状は、社会的・病理的側面を反映しているという。中央大学社会学科のシン・ジヌク教授は「最近の事件は社会の底辺にどれだけ大きな攻撃性エネルギーが凝縮されているかを示している」とし、「無差別犯罪が頻繁に起きる様相を呈している」と説明している。

 無差別殺傷ばかりでなく、自殺も多い。韓国の21年の自殺者は1万3300人で、10万人当たり26人である。20年には経済協力開発機構(OECD)加盟国中、自殺率が最も高かった。韓国では2003年以降、OECD加盟国のうち最も高い自殺率を記録し続けており、20年は自殺が19~29歳の死亡原因の1位となった。

 殺人の予告文がオンライン上に氾濫しているという点も、前例のない現象だ。前述の新林駅の殺傷事件以降3週間ほどの間に、韓国各地で殺人予告が確認され、59人が警察に検挙され、3人を拘束した。

 このうちの半数が未成年である。検挙した人の多くは「冗談でやった」と述べたケースが多いが、「新林駅で女性20人を殺す」と予告して購入したナイフの写真を投稿した人物は、盤浦洞(バンポドン)高速バスターミナルに凶器2点を所持して現れている。

 こうした予告文を投稿し検挙された人たちは、ほとんどが定職のない20~30代の青年たちだ。

 現代経済研究院のチュ・ウォン経済研究室長は「健全な社会生活ができない青年たちが増えている」「最近の事件が青年層に集中しているのは経済的な問題とも無関係ではないように思う」とコメントしている。

母国での生活をあきらめ
国籍を離脱する韓国人

 韓国では、自殺や無差別殺傷事件などの極端な行動に出なくても、生活のストレスに耐えられない人が増えているようだ。

 韓国法務部によれば、2012~22年に26万人の韓国人が国籍を離脱した。年平均2万人以上だ。その他、国籍は韓国だが、生活の拠点を海外に移す人も多い。