浜松町駅直結の高層マンションに
「三田綱町」の高級物件

 その一つは、JR山手線の浜松町駅に直結するWORLD TOWER RESIDENCE(東京・港区)。「世界貿易センタービル」の建て替えに伴う再開発によって誕生した高層マンションだ。

 この3月の販売実績を見てみると、平均価格は2億4933万円。169戸供給され、平均倍率4.8倍で即日完売している。

 駅直結のタワーマンションはこれまでも全物件値上がりしており、その資産性の高さは業界では知らない人はいないだろう。山手線の駅直結であるWORLD TOWER RESIDENCEは値上がり必至の鉄板商品であり、投資用として業者も多数買いに来たことは想像に難くない。

 この物件の一般販売対象戸数は376戸で、8月中旬時点で残っているのが88戸。かなりの高額にもかかわらず、288戸がすでに売れているということだ。

 もう一つの高額物件は三田ガーデンヒルズ(東京・港区)。三田綱町(みたつなまち)という、都心の高台に隣接するエリアの再開発物件だ。この地域の物件は以前から「億ション」ばかりだったが、その中でも極めて高額な物件である。

 筆者が主宰する無料会員制サイト「住まいサーフィン」の会員に集めてもらった価格表では、その平均価格は3億6219万円となっている。にもかかわらず、8月中旬時点で、総戸数1002戸のうち754戸がすでに売れているようだ。

 新築マンションの売れ行きは「総販売額」(価格×供給戸数)という指標でも評価できるが、この2物件は23年上半期だけで計1042戸を供給し、合わせて3357億円の総販売額を上げている。

 首都圏全体の23年上半期における総販売額は、前述した価格(8873万円)と供給戸数(1万502戸)を掛け合わせた約9318億円(前年同期比12.6%増)だ。このうち上記2物件の総販売額は約36%を占めている。いかに両マンションの売れ行きが突出しているかが分かるだろう。

 だが裏を返せば、この2物件以外の新築マンションはあまり売れていないという話になる。筆者の試算では、これらを除いた首都圏の23年上半期実績は平均価格が6302万円、供給戸数が9460戸、総販売額が約5961億円となる。

 首都圏における22年上半期の平均価格は6510万円、供給戸数は1万2712戸、総販売額は約8276億円だった。前提条件が異なるため単純比較はできないが、23年以降、好立地ではない普通の物件が売れているとは必ずしも言い切れないだろう。

 こうした実態を見ると、「東京23区のマンションは全て人気で値上がりしている」とはいえないことが分かるはずだ。WORLD TOWER RESIDENCEや三田ガーデンヒルズの存在を知らないまま、販売価格の上昇というニュースの表面だけをなぞって誤解している人が多いような気がする。

 ちなみに14年以降、首都圏全体の年間総販売額は2兆円前後で大きな変化はない。