「1億円ないと東京23区で新築マンションは買えない」と思う人の大誤解Photo:PIXTA

一般消費者の中には、「1億円ないと東京23区で新築マンションは買えない」と思っている人がいるかもしれない。確かに首都圏新築マンションの平均価格は高騰しているが、それは「好立地の2つの高額物件」に引っ張られているからだ。他の物件は、必ずしも高くても売れているとはいえない。その高額物件の実名と、新築マンション市場の実態を詳しく解説する。(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)

首都圏の新築マンション販売が低迷中
それでも売れる「2つの物件」とは

 不動産経済研究所の調べによると、2023年上半期(1~6月)における首都圏の新築マンション供給戸数は1万502 戸(前年同期比17.4%減)に落ち込んだ。22年の実績は2万9569戸だったため、今後も2割減のペースが続けば、23年の新築供給戸数は2.4万戸ほどになるだろう。

 首都圏の新築供給戸数は、18年は3万7132戸、19年は3万1238戸、20年は2万7228戸、21年は3万3636戸という水準だった。そのため、23年の新築供給戸数がこのまま低調に推移すれば、近年では類を見ないほど少なくなってしまう。

 新築マンションが絶滅危惧種になりそうだという話は『新築マンションが「絶滅危惧物件」になりつつある理由』(本連載で19年8月29日に掲載)で書いている。筆者が約4年前からそう予測していた要因は、この記事を読んでみてほしい。

 その一方で、今年3月には首都圏新築マンションの平均価格が1億4360万円に達し、初めて1億円を超えたことが大きなニュースになった。新築供給が減少している状況下で、平均価格は上昇しているわけだ。

 不動産市場は、価格が上がると供給戸数が減るメカニズムなので、この現象そのものは理にかなっている。買える人が少なくなるからだ。

 そして上半期の新築マンション平均価格を見てみると、首都圏は8873万円、都区部(東京23区)は1億2962万円と高額になっている。そのため一般消費者は「都心全体でマンションの需要増が続いている」「東京23区では1億円出さないと新築物件を買えない」というイメージを持っているかもしれない。

 だが、こうした印象は「数字の中身」を見ると変わるだろう。実は、都区部の新築マンション平均価格は「好立地の2つの高額物件」に引っ張られて高くなっているのだ。