東京電力福島第1原子力発電所の処理水に関する関係閣僚会議後、取材に応じる東京電力ホールディングスの小早川智明社長東京電力福島第1原子力発電所の処理水に関する関係閣僚会議後、取材に応じる東京電力ホールディングスの小早川智明社長 Photo:JIJI

東京電力ホールディングス(HD)が福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出を24日にも始める。東電HDが長らく抱えてきた大問題に一定の目途が付き、残す課題は柏崎刈羽原発の再稼働となる。大きな懸案の処理が進む一方で、東電HD社内では長期政権となっている小早川智明社長体制の「次」を見据えたような社内再編が着々と進んでいる。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

「東電の認識は?」
堂々巡りの記者会見

 関係者の一定の理解を得たという認識が政府から示された――。

 東京電力ホールディングス(HD)が22日に開いた会見で、東京電力福島第1原子力発電所の処理水の対策責任者は、そのような説明を繰り返した。

 政府が22日に福島第1原発から出た処理水の海洋放出を決定したことを受け、東電HDは同日、処理水の海洋放出スケジュールや方法の詳細を発表した。早ければ24日から始め、風評被害への賠償にも対応する。ただ、一部の地元関係者からは批判の声も上がっている。

 会見でたびたび東電HDが認識を問われたのは、国と共に2015年に地元の漁連に示していた「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という約束についてである。

 前出の責任者は何度も同じ質問を受けたが、冒頭のような発言と「東電は国の指導を踏まえながら廃炉を実施する」などといった説明の繰り返し。“主体性なき東電”という印象を強くにじませた。

 それもそのはず、現在東電HDの株式の50%超を握るのは原子力損害賠償・廃炉等支援機構。会見時の堂々巡りのやり取りは、東電HDが12年から事実上国有化されている企業であることを改めて知らしめる一幕となった。

 ともあれ、17年の就任から長期政権となっている小早川智明社長体制が抱えていた大きな懸案の解決に目途が立った。東電HDにとって残す大きな課題は新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働となった。

 この柏崎刈羽原発の再稼働にも目途をつければ、「いよいよポスト小早川体制へと移行する」と見る業界関係者は多い。

 東電HDの懸案処理と並行するように、実はポスト小早川体制へのバトンタッチを見据えたような社内再編が着々と進んでいる。