移籍先のキーパーも日本代表
決して楽ではない競争

 鈴木が移籍先に選んだシント=トロイデンは、日本のIT大手、DMMグループが17年秋に経営権を取得した。それ以来、日本人選手がヨーロッパでステップアップしていく足がかりになると公言している。過去には遠藤航(現リバプール)や鎌田大地(現ラツィオ)、冨安健洋(現アーセナル)ら森保ジャパンの中心選手が在籍し、5大リーグへ羽ばたいていった。

 今シーズンも元日本代表のFW岡崎慎司ら7人の日本人選手が在籍する。ゴールマウスを守る日本代表の守護神シュミット・ダニエルは、今夏のステップアップ移籍も報じられていた。しかし、リーグ戦の4試合を終えた段階で具体的な動きはない。鈴木にとって西川以上に高く険しい壁となる。

 もちろん鈴木本人も、無条件で試合に出られるとは考えていない。シュミットを含めて「必ず高いレベルの競争がある」と歓迎した上で、海外でのプレーに備えて準備も積んできたと明かす。

「こういうときのために、2年ほど前から英語をしっかりと勉強してきたつもりです。最初はほとんど話せませんでしたが、いまは試合のなかでも自信を持って話せるレベルだと思います」

 マン・Uからのオファーは完全移籍だったが、シント=トロイデンへは1年間の期限付き移籍。つまり確固たる結果を残せなければ、来シーズン以降の道が開けないかもしれない。すべてを承知の上でサッカー人生の設計図を書き換えた鈴木は、すでに新天地で練習にも合流している。未定だった背番号も「1」をつけることが決まった。

「シュートへの対応はもちろんですし、空中戦や足元の技術を含めて、1試合のなかでどれだけハイレベルで出せるか。すべてをしっかりとできるゴールキーパーになっていきたい」

 気持ちも新たに出場資格のある来夏のパリ五輪、年齢制限のないA代表で臨む次回以降のW杯、そして世界一のゴールキーパーを目指すホープは、8月21日に21歳の誕生日を迎えたばかりだ。