JALとANAの機体Photo:PIXTA

注目度の高い業界や企業の最新決算を分析する『最新決算 プロの目』の本稿では、大手航空会社を取り上げる。2023年4~6月期決算で、ANAホールディングス(HD)と日本航空(JAL)はそろって好調に滑り出した。特にJALは同期としては4期ぶりに黒字転換した。両社の新型コロナ禍からの「復活度」はいかに。東海東京調査センター・金井健司シニアアナリストに分析してもらった。(ダイヤモンド編集部 梅野 悠)

ANAHDとJAL、共に計画より上振れ
足元は運賃高で国際線旅客収入が増加

 新型コロナ禍で業績が落ち込んだ航空2強のANAホールディングス(HD)と日本航空(JAL)は、2023年3月期で通期として3期ぶりに黒字転換を果たした。今期の4~6月期決算でも、JALの本業のもうけを示すEBIT(利払い・税引き前利益)が313億円となったほか、ANAの営業利益は、同期としては過去最高の437億円。両社共に好調な滑り出しとなった。

 航空セクターをカバーする東海東京調査センター・金井健司シニアアナリストは、両社が好調な要因をこう解説する。「国際旅客事業で北米などからのインバウンド需要が好調で、高イールド(旅客1人、1キロ当たりの収入単価)を維持できている。また、燃油費用の低下による営業費用の下振れの寄与も大きい」。

 実際、23年4~6月期のANAの国際線旅客収入は1673億円で、前期の622億円から約2.7倍まで伸びた。旅客数は前年同期の68万人から2.4倍の約162万人だった。

 また、JALのフルサービスキャリアの国際旅客収入は1475億円で、前年同期の624億円から2.4倍となった。同じく旅客数も前年同期の72万人から2.1倍の約157万人だった。

 両社の収入単価が維持できている背景には、需給要因もある。アジアと北米を結ぶ太平洋路線では、デルタ航空やアメリカン航空といった米大手航空会社の座席供給が遅れており、日本の航空2強のシェアが高まっているという。中国の航空会社の北米便の回復も遅れており、「全体的に需給が逼迫した状況が、イールド押し上げにつながっている」(同氏)と話す。

 結果として、両社とも国際線の旅客数はコロナ禍前の6割強ほどしか回復していないにもかかわらず、国際線の旅客収入はコロナ禍前を上回る形で着地した。

 両社の23年4~6月期の利益差は単純計算で100億円強。両社のコロナ禍からの「復活度」に関して、金井氏は、「ANAの方が、利益の戻り幅や社内計画からの上振れ幅という観点で、一歩先を行った」と分析する。

 一方で、金井氏は「JALが今後巻き返す可能性もある」と指摘する。次ページでは、金井氏が、両社のある重要指標を分析した上で、JALの逆転シナリオについて解説する。