EV充電ゴールドラッシュ#1Photo:FrankRamspott/gettyimages, Masataka Tsuchimoto、写真提供:パワーエックス, DMM.com

電気自動車(EV)の普及に歩を合わせ、充電インフラ設置事業は新規参入ラッシュとなっている。石油元売り最大手ENEOS、電力系ベンチャーENECHANGE、自動車系ベンチャーのTerra Motorsなどに加え、最近では伊藤ハムの御曹司が率いる電力業界の風雲児パワーエックス、DMM.comも参入した。特集『EV充電ゴールドラッシュ』(全8回)の#1では、電力大手や自動車大手の連合体の老舗e-Mobility Powerも含め、乱戦模様となってきた業界の最新勢力図を一挙に紹介する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

新規参入DMM.comがEV充電で
異例のテレビコマーシャル

 ――ついに始めるEV充電サービス♪

 ポップな音楽とともに男性の声が流れるテレビコマーシャル。広告主は、今年5月、電気自動車(EV)充電インフラ設置事業に新規参入したDMM.comだ。

 この業界では異例のテレビCM。同社の力の入れ具合を見て、「ここまで業界が過熱してきたか」と、複数の競合会社の幹部が驚いた。

 大手自動車メーカーによるEVの新車投入が相次ぎ、普及率も飛躍的に伸びた2022年は「EV元年」と呼ばれた。時期を前後して、EVにエネルギーを補給する充電インフラ設置業界に新規参入者が相次いだ。その中でDMM.comは後発の1社であり、異例のテレビCMは出遅れた時間を金で埋めようという焦りにも映る。

 各種インフラの歴史を振り返るまでもなくインフラビジネスは先行投資期間が長い。一方、リターンを生む保証はない。

 東京電力ホールディングス、中部電力、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、三菱自動車といった名だたる面々が出資し、国内最大のEV充電ネットワークを誇るe-Mobility Powerですら、最終赤字決算が続く。

 EV充電器には2種類あり、低出力で長時間かけて充電する「普通充電器」と高出力のため短時間で充電できる「急速充電器」がある。さらに設置する場所や狙う客層も細かく分かれる。そのため、展開する充電インフラ設置事業者のポジション取りもさまざまだ。

 ただざっくりと言えば、「普通充電市場はレッドオーシャン、急速充電市場もそうなりつつある」とある業界関係者は解説する。

 EV充電インフラ業界で何が今起きているのか。市場がレッドオーシャンに向かう中でも次々と参入者が現れる理由とは。次ページでは、業界の主要プレーヤーの参入の動きと併せ、大手エネルギー会社や大手商社からベンチャーまで入り乱れる最新の業界勢力図を明らかにする。