新たな補助金制度を作るより
トリガー条項の凍結解除を検討せよ

 制度の趣旨を素直に解釈すると、トリガー条項は、資源価格高騰などやむを得ない事情でガソリン価格が急激に上昇した場合に、これに対応しきれない業者や生活者を救済する激変緩和措置として設けられたものだろう。まさに今の状況がそれに当たるので、この凍結解除、すなわち自然な発動が求められるのではないかと思われるのだが、その気配は全くない。

 新たな補助金制度を作るよりも、元々ある制度の趣旨を生かす方が自然だし、制度をシンプルに運用できる。しかし、政府の意向は、暫定税率=特例税率による税収は固定化して守りたいということであるらしい。

 そもそも、お金に色は着いていないので、「○○による税収は、××に支出する特定の財源だ」という決め事に実質的な意味はない場合が多いはずだ。「××に対する支出」が一般財源からも支出されなければならない重要度の高いものなら、この支出に充当された税収の分だけ、一般財源に余裕ができるので、「○○の税収」は実質的に一般財源として流用されたのと同じだ。

「○○は××の特定財源だ」という呪文は、専ら「○○税」を創設するために、一定数いる知恵の回らない国民を納得させるための方便にすぎない。このことは、民主党政権時代に一部の政治家も含めて丸め込まれた「消費税は社会保障のための財源」との説明を思い出すとよく分かる。

 ただし、税金が実現してしまうと、その金額分を特定の財源に充てたことにしなければならない建て付けは時に不便だ。道路整備が進んだときに暫定税率を特例税率にすり替えて一般財源化した際に、財政当局はうまくやったと思ったかもしれない。しかし、その際に付けたトリガー条項を凍結するに当たって震災の復興財源という別の方便が必要になり、今になってみるとその方便がまた古くなった。

 トリガー条項の凍結解除は、もともと野党側(特に国民民主党)から出てきた話なので、自民党は乗りにくいかもしれないが、新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう。