従業員数190人のジブリは
中小企業の課題を象徴するモデルケース

 ジブリは従業員数190人の中小企業だ。日テレ傘下入りは、わが国の中小企業が抱える問題を象徴するモデルケースといえる。

 それは、中小企業を対象に実施されたアンケートなどからも確認できる。代表的な調査として、2022年12月、東京商工会議所は「中小企業の経営課題に関するアンケート」の調査結果を公表した。それによると、中小企業に共通する主たる問題として、債務の返済などを含めた資金繰り、後継者確保が深刻だという。

 特に資金繰りに関しては、約4割の中小企業が債務の過剰感を抱えているという。業種別では、飲食・宿泊業が最も過剰感を抱えている割合が高く、76.3%に上った。

 また、後継者問題に関して、調査対象1292社のうち「すでに後継者候補を決めている」「後継者候補はいる」との回答が計49.6%だった。そのうち、63.5%が子どもに継がせるという。

 一方、過半数の企業は後継者を見つけられていない。「後継者を決めていないが事業は継続したい」が35.8%、「自分の代で廃業する予定」が7.0%、「M&A(企業の合併・買収)などで会社を譲渡する予定」が2.9%だった。

 中小企業の抱える問題に照らすと、ジブリは大企業による買収によって、資金繰りの安定と後継者問題の解決を同時に目指したケースに分類できる。業種を問わず、一般的な中小企業であれば、大企業の傘下に入るなどして安定した体制を整備し、着実に収益を積み上げることができればよい。

 反対に、収益を持続的に上げることが難しいと、借入資金の返済は困難になる。収益の悪化によって返済条件の変更や返済の遅れは増える。東京商工会議所の調査では、赤字企業の2割が新型コロナウイルス関連融資の元金の返済を猶予され、利息のみを支払う状況に陥ったという。中小企業の経営環境の厳しさを踏まえると、多くのヒット作を生み出してきたジブリではあるが、経営の厳しさが高まっていたことも推測できる。