大企業の日テレ傘下で
職人集団ジブリはうまくいくか

 中小企業には資金繰りを確保し、後継者を見いだすなどしたうえで、デジタル化への対応を急ぎ、事業運営の効率性を高めようとするケースも多い。それは、ジブリとの決定的な違いでもある。

 ジブリは、監督の徹底したこだわりを通して、多くの人を魅了する作品を世に送り出した。まさに芸術であり、職人の世界だ。科学的な発想に基づいて作画のスピードあるいは正確性を引き上げる発想とは異なる。

 基本的には昔ながらの方法で、一つ一つのキャラクターの動きや質感などに徹底してこだわる。満足できない場合は、宮崎監督自ら絵コンテを仕上げる。そうした独自の価値観を磨き上げてきたからこそ、世界中を感動させる作品を生み出す。そこにジブリの魅力がある。それは経済合理性で説明できるものではない。

 一方、日テレは大企業だ。職人技によって映画作品を作る組織ではない。限られた予算、人員、作成期間の中、デジタル技術などを駆使して映像を作る。経営陣が立案した戦略に、従業員は従う必要がある。

 日テレの事業環境もまた厳しさを増している。テレビを見る人どころか持つ人までも減少している。YouTubeやNETFLIXなど動画ストリーミングプラットフォームの普及は大きい。Z世代(1990年代後半から2010年生まれの世代)には、1週間に一度もテレビを見ない人もいる。

 今後の注目点は、日テレ傘下でジブリが、今までと同じような作品を生み出し続けられるかに尽きる。日テレとジブリは、職人集団と経済合理性が求められる組織という、ある種の矛盾にぶち当たる。

 その上で、二つの組織が信頼関係を醸成し、宮崎監督らが大切にしてきた価値観を共有できれば、これまで以上に魅力ある作品を世に送り出すことができるだろう。容易なことではないが、何とかして日テレとジブリがそうした展開になることを期待したい。