しかし、その時は明るく振る舞って食事をしていても、帰ってひとりになると、無理をした反動なのか、やはり精神が沈んでいく。すぐに、「絶対大丈夫だから、大丈夫だから、何をそんなに不安になってるんだ」と自分に言い聞かせました。

「こういう経験ものちに財産になっていくんだから。口元はちゃんと笑っていろ。大丈夫だから、大丈夫だから……」

 とはいえ、人間は他人を励ますことは簡単にできますが、自分自身を励ますことは難しい。これを身をもって知りました。

更年期の誰にでも
来るうつ状態

 ちょうどその時期、素晴らしい出会いがあったんです。

「昭和29年の午年生まれの会を作りたいと思っているのですが、いかがでしょうか」

 ある方からこんな連絡が入りました。

 話を伺うと、メンバーは当時の小泉政権下で自民党の幹事長を務めていた安倍晋三さん、今は神奈川県知事ですが当時はニュースキャスターだった黒岩祐治さん、元フジテレビアナウンサーで今はフリーアナウンサーの酒井ゆきえさん。一般の方ですと銀行の頭取の方など、いろいろな業界の方がいらっしゃる。しかも、みんな29年生まれだというのです。

「ちょうど50歳になった人たちで『午年の会』を作ったので、我々と同い年の安倍さんを総理にすることを旗印に集まりませんか」

 大勢が集まる場は好きではなかったのですが、更年期症状から気分転換をはかれるかもしれない食事会とあらば話は別。参加してみることにしました。

 最初に集まった場所は、なんとある参加者の方の会社の会議室。殺風景な会議室に20名以上がテーブルを囲んで座り、紙コップにビールを注ぐような簡素な会でした。ひとりずつ自己紹介をすると、やはり業種も違えば故郷も違う。同じなのは昭和29年の午年生まれということだけ。

 しかし、驚いたことに、会のメンバー全員、共通する悩みや葛藤を抱えていたんです!しかも、みんな50代に突入してから、心に鬱々した何かを抱え出したと。黒岩さんはキャスターとしてこの先どうするか、安倍さんは総理への道として何をすべきか。他の皆さんも社内や組織でそれぞれの立場で行き詰まりを感じていた。上にはまだ活躍する世代が大勢いて、下には勢いのある若者が突き上げてくる。そんな共通の悩みを持っていたからか、初対面なのに意気投合し、そこから本格的な会が始まったんです。