DB年金の運用成績公開と、その分かりやすい提示は、大きな予算を使わず、かつ政府に直接的な責任が及ばない形でリスク資産積み増しの「成果」を得られる策になる可能性がある。年金はもともと大きな公的サポートを得ている制度なので、基金は情報公開に反対できる立場にない。分かりやすい情報公開を大々的に行うといいだろう。

 母体企業の方針などでリスクを小さく抑えたい年金基金は、加入者向けに丁寧に説明したらいいだけのことだ。

DCで効果的なのは
「デフォルトファンド」

 DCでも、各企業の運営管理機関ごとにおける加入者の運用リターンの平均や分布状況、さらに全体の加入者のリターン分布を公表することは、情報提供として望ましいだろう。また、刺激を受けて運用に取り組む加入者がある程度出てくることは考えられる。

 しかし、個々の加入者にとっては、自分の実名入りで「偏差値」に相当するものが公開されるわけではないし、何よりデータを見ることも、それを見て行動を起こすことも「面倒くさい」ので、DBの企業年金基金に対するほどの効果は期待できまい。

 DCの場合は、運用開始時の初期設定状態(デフォルトファンド)について、リスクを取った状態のものからスタートすることが、行動経済学で言う「ナッジ」として有効であることが相当程度はっきりしている。

 例えば、公的年金の基本ポートフォリオ(現在「国内株式25%、外国株式25%、国内債券25%、外国債券25%」の4資産均等)をインデックスファンドで作り、それを「デフォルトファンド」として企業型DCを運営するように義務づけるとしよう。そうすれば、「リスク資産に多く投資させて国民の資産を増やしたい」「日本株にもっと投資させたい」といった政府の目的が達成されるのではないだろうか。

 もちろん、大前提としてDCの運用は加入者の自由であり、デフォルトファンドではなく、元本確保型資産100%でも、株式100%でも、加入者が自由に選択できることは確保されていなくてはならない。デフォルトファンドが常に絶対に望ましいとは誰も保証できないのだし、政府に最後の言い訳を用意するためにも、加入者における運用の自由は強調されるべきだ。それでも、デフォルトファンドに多くの加入者がとどまることが予想される。

 成績公開とデフォルトファンドの両方をやればいいと思うが、より効果的なのはデフォルトファンドだろう。