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岸博幸のクリエイティブ国富論

サーベラスは西武を再生できるか?

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第219回】 2013年3月8日
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 政府の産業競争力会議では今週、“産業の新陳代謝の促進”というテーマについての議論が行われましたが、このテーマを考えるに当たって格好の材料となるニュースがありました。米国投資ファンドのサーベラスによる西武ホールディングス(HD)の株の買い増しです。

産業の新陳代謝を
官民ファンドが阻害する恐れ

 政府の産業競争力会議が“産業の新陳代謝の促進”について議論しているのは、非常に正しいと言えます。日本では、政府の過剰な支援策によって本来は淘汰されるべき企業もたくさん生き残っており、また株主が株主権を行使して非効率な経営を行う経営陣の責任を追及することもほとんどないため、産業の新陳代謝が進んでいないからです。

 安倍政権は金融緩和と財政出動によりデフレ脱却と景気浮揚を目指しており、それ自体は非常に正しい政策対応ですが、所詮は政府の力で人為的に景気を持ち上げるだけに過ぎません。本当の意味で日本経済が再生するには、民間の産業の競争力自体が強化される必要があり、そのためには産業の新陳代謝の促進は不可欠です。

 その観点から言えば、政府が公的資金を投じて様々な分野で官民ファンドを濫立させようとしていることは、やはり問題と言わざるを得ません。

 市場メカニズムの観点からは当たり前のことですが、産業の新陳代謝を促進するためには、ファンドの資金は、強くなるポテンシャルがあるのに何らかの事情でそれを発揮できず低迷している企業に投資されるべきです。そうしたポテンシャルもなく弱いだけの企業に投下されるべきではなく、むしろそうした企業は市場から退出すべきなのです。

 しかし、既存の官民ファンドでも、投資判断に政治家や官僚が介入し、結果として本来は助けるべきではない企業に投資される例が散見されます。よほどガバナンスがしっかりしていないと、官民ファンドは淘汰されるべき企業に補助金を与えるのと同じ効果を持ちかねず、“産業の新陳代謝の促進”が逆行しかねません。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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