企業震撼!膨張する地政学リスク#4Photo:VCG/gettyimages

日米欧が覇権を握ってきた「自動車世界一」に、中国が大手をかけようとしている。中国が、電気自動車(EV)に欠かせない電池サプライチェーンを囲い込んでいるからだ。『企業震撼!膨張する地政学リスク』の#4では、中国EVの世界覇権獲得への4段階計画の正体を明らかにする。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)

「週刊ダイヤモンド」2023年10月21日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

中国が“世界一の自動車強国”となるために
描いている「4段階計画」とは?

 10月27日、中国の李克強前首相が死去したとの現地報道が世界を駆け巡った。すでに習近平政権の権力中枢から外れていたとはいえ、日本でも馴染みのある前首相の訃報受け、国内産業界ではその影響を計りかねている。

 ただでさえ、中国経済には不動産市況、失業率、デフレの三大懸念が立ちはだかっている。日本のバブル崩壊時と類似した状況となり暗雲が垂れ込めているのだ(特集『対話で分かる地政学』の#11『習近平が抱く「第二の毛沢東」の野望、肝心の中国経済に迫る3大リスク』参照)。

 それに加えて、米中対立は激化する一方だ。米国や日本など西側諸国が、半導体など重要技術のサプライチェーンにおいて、対中包囲網を築こうとしている。

 中国は、このような難局に直面しているからこそ、国策である自動車産業の強化に動く公算が大きい。中国経済の減速と米中対立を突破する“切り札”として、自動車産業の活性化に躍起になるからだ。

 次ページでは、中国が「世界一の自動車強国」となるために想定している「4段階計画」の詳細を明らかにしていこう。