例えば自分にとっての「優先順位1位」は家族だという人はそれがわかっていれば、まず家族を第一に考え、無理のない行動ができる。もしそれで職場や友人との関係に少し距離が生まれたとしても、自分にとって最も大切なものを失うことがなければ、「幸せ」から遠ざかることは少ないだろう。

 逆に何を優先すべきかがあやふやのままだと、どこかで無理をすることになり、知らず知らずのうちに自分を追い込んでしまう。

「すべての人に『いい人』であろうとすると、これだけ我慢しているのだから、頑張っているのだから、と相手に対して勝手な期待も生まれます。しかし、我慢や期待をしたところで、自分の理想通りにはならないのが人間関係です。結局どんなふうに生きても誤解されたり、何かを失ったりするのなら、好きに生きたほうが気持ちもラクなのではないでしょうか」

「好かれる技術」よりも
重要な「嫌われる技術」

「いい人」という評価を手放した上で、さらに嫌いな人、一緒にいると心が苦しくなる人からは上手に距離を取ることも大事だと藤野氏は言う。

「一緒にいて『私ってダメな人間だな』と落ち込んだり、苦しさを感じたりする人が身近にいるのなら、いっそ離れてみる。自分の心が苦しくなってしまう人といれば自信はなくなり、自分を愛し、肯定する気持ちもなくなってしまいます。『なんとなく居心地が悪いけど、特にトラブルがあるわけでもないし…』と決定的なことがないからとズルズル一緒にいても、そこにあなたの幸せはありません」

 大切なのは、自分の気持ちが疲れてしまう人と距離を置き、上手に「嫌われる」ことだという。

「『好かれる技術』よりも『嫌われる技術』のほうが、実は人生には重要です。嫌いな人の言動にいちいち振り回されて、でも離れられないままというのは、時間がもったいないですよね。そもそも嫌われたくない、と思ってしまうのは思考のクセみたいなもの。なぜ嫌われたくないと思うのか、嫌われたらどうなるのか、どんなデメリットがあるのかを掘り下げ、紙に書き出してみると、意外と『別に嫌われても大したことないかも』『離れていいかも』と気づけるのではないでしょうか」

 嫌いな人や苦手な人のために心を砕き、人生の大切な時間を使う必要はない。疲れる人とは距離を置き、ありのままの自分でいられる時間を増やすことが、自己を肯定し、受容することにもなる。

「付き合いたい人とだけ付き合うのが、無理せず頑張りすぎない人間関係のポイント。すぐにはできなくても意識をしてみるだけで少しずつ自分の人生を取り返せます。そして自分の気持ち、状態を大事にする。たとえばテレビの内容が入ってこない、お風呂に入るのもしんどい。そんな自分の『お疲れサイン』にはしっかり目を向け、無視しない。『ちょっと疲れてるのかも』『頑張りすぎてるのかも』と他人を気遣うように、自分自身を気遣って大切にしましょう」

 嫌われることを恐れず、「誰か」よりもまず「自分」を優先する。それが自分の幸せ感につながっていくのかもしれない。