「嫌われる技術」の方が「好かれる技術」よりずっと重要なワケ【精神科医が解説】写真はイメージです Photo:PIXTA

何か決定的なトラブルがあるわけでもないのに「人間関係」の悩みや葛藤があるとき、職場や友人、家族など周囲との関係に疲れてしまったとき、私たちはどうすべきか。『「誰かのため」に生きすぎない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者でSNSでも人気の精神科医、藤野智哉氏に人間関係でストレスを溜めやすい人の特徴と気持ちをラクにするためのコツを聞いた。(清談社 吉岡 暁)

「失いたくないもの」に
優先順位をつける

 近年、仕事のストレスなどが要因で、心のバランスを崩す人は少なくない。昨年末に発表された「コロナ禍における職業生活のストレスに関する調査2022」(連合調べ)によると、「現在、仕事や職業生活に関して強い不安やストレスを感じている」という労働者は74.3%に及び、ストレスを感じるものとして「職場の人間関係」(30.9%)が最も高くなり、次に「仕事の量」、「地位・待遇」が続く結果となった。3割以上の人が、職場の人間関係を悩みのタネに感じているのだ。

「すべての悩みは対人関係の悩みである」と心理学者アドラーが言うように、実際多くの人の「悩み」は、職場や友人、家族などの人間関係に集約されることがほとんどではないだろうか。

「どれだけ頑張っても報われない、幸せになれない。そう感じてしまう人は、『自分の本当の幸せ』にフォーカスできていないのかもしれません」

 そう話すのは、『「誰かのため」に生きすぎない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者で、SNSでも大人気の精神科医・藤野智哉氏だ。

「人間関係で悩みやすい人に特に注意してほしいのは、周囲から『いい人』と思われるような行動が習慣化していないか、という点です。具体的には、『LINEを早く返そう』『疲れているけど友人の誘いにはのらねば』とか、もしくは、やりたくもないことを率先して引き受けてしまうなど、です。自分の感情を無視して、他人からの評価を優先させていると、自分の『幸せ感』はどんどん減っていきます」

 藤野氏によると、他人に対して「いい人」であろうとする傾向が強い人は、人間関係でストレスを感じやすいのだという。

「他人を気遣い、思いやるというのは素晴らしいことなのですが、一方で別の誰かから見れば『八方美人』『こびている』『偽善者』という目で見られたりします。どれだけ善人であっても、結局人は自分の見たいようにしか他人をジャッジしません。全員に好かれるなんて最初から無理なので、逆に『これだけは失いたくない』という自分の中の大切な関係や軸を定め、優先順位をつけてしまったほうがいい。そうすることで、自分にとって必要なものだけにフォーカスして人付き合いができ、ストレスも軽減できます」