公益社団法人「日本経済研究センター」が22年11月に発表したアジア経済予測によれば、日本に多く出稼ぎに来ている東南アジア各国(ベトナム、インドネシア、タイ)の現地給与は2030~32年に日本の給与水準の50%を超える。日本に来るうまみが薄れるため、2032年には来日する外国人労働者が頭打ちになるという。

 2018年の入管法改正時、国会では「これは移民政策を曖昧化したもの」という批判があった。自民党内の保守派を中心に「移民解禁」には反対が根強い。それで、「家族は連れてこられない」などの規制をかけて、永住につながらないようなハードルを作ったわけだが、あの時、移民の是非についてもっと国民的な議論になっていたら、と思う。人口減少社会で、どうやって日本が外国人とともに生活し、働く社会を作るか、どういう負担をするかなど、総合的なグランドデザインを描くべきだったのだ。

 安倍首相は当時国会で、「国民の多くの方々が懸念を持っているような移民政策を取る考えはない」と答弁していたが、改正法施行前後に実施された読売新聞(2019年5月5日付)の外国人材に関する世論調査では、外国人が定住を前提に日本に移り住む「移民」の受け入れについて、賛成が51%で、反対の42%を上回った。

 国民的な議論の素地はあった。安倍政権時代に移民や外国人労働者の待遇などについて、人権面も含め深い検討が行われなかったことが悔やまれる。