JR東日本、au、PayPay… 異業種 銀行侵入の衝撃#3

設立から5年で法人口座を10万超に増やしたGMOあおぞらネット銀行。業界最安値の水準だった送金手数料や無料銀行APIの提供も話題となったが、支持された背景には金融サービスの徹底的な使いやすさと改善のスピードがある。行員はわずか224人。特集『異業種 銀行侵入の衝撃』(全5回)の#3では、なぜこの人員規模で達成できたのかに迫った。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)

設立5年のGMOあおぞらネット銀!
法人10万口座を獲得できた独自手法とは?

 2023年10月末現在、国内には都市銀行や信託銀行、地方銀行など、合計132行の銀行が存在する。完全なオーバーバンキング状態だ。それでもフィンテックの力を借りて、銀行代理業や銀行ビジネスに参入してくるチャレンジャーが後を絶たない。

 オーバーバンキングであることを考えれば、銀行ビジネスはまだまだブルーオーシャンで、新たに開拓する市場や成長の伸びしろがあるとは思えない。だが設立から5年で、店舗もATMも持たないにもかかわらず、法人口座10万超を獲得したインターネット専業銀行がある。18年6月にあおぞら銀行が約85%、GMOインターネットグループとGMOフィナンシャルホールディングスが約14%を出資したGMOあおぞらネット銀行だ。

 GMOあおぞらネット銀行の行員はわずか224人。他行宛ての送金手数料は、当時業界最安値の水準だった145円(現在は三井住友フィナンシャルグループの個人向け金融サービス「Olive(オリーブ)」が無料)。銀行のシステムと接続し、残高照会や振り込み依頼など銀行の機能を外部からオンラインで利用できる銀行API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)も無償で提供している。

 APIは、アプリやソフトウエア同士が情報をやりとりする際に使用されるプログラミング上の窓口のこと。多くの金融機関は堅牢な既存システムにAPIの接続口をつくる必要があるため難易度が高く、接続のための料金を高額にせざるを得なかったが、GMOあおぞらネット銀行は18年に銀行事業に参入した後発組であるが故、システムとAPIの接続を戦略的に低く抑えた。

 送金手数料の安さと、口座情報をアプリに反映する「参照系」、支払いや送金を指示する「更新系」の28種の銀行APIの無償提供が、創業間もないスタートアップ企業などに支持され、法人口座を増やした。

 ただし、それだけが急成長の要因ではない。スモールカンパニーやスタートアップ企業向け銀行でナンバーワンを目指すニューカマーは、伝統的な銀行では考えられない独自の取り組みとスピード感で、取引先企業を増やしてきた。

 一体、それは何なのか。次ページで探っていく。