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大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

“ヤンキー先生”の訪問で入り混じる期待と不安
苦悩し続けた「大川小遺族の2年」を振り返る

加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]
【第21回】 2013年3月13日
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 「当日に起きたことの検証は必要だが、私が非常に問題意識を持っているのは、その後の教育委員会の対応の検証。それをきちっとしなければならないだろうと思っているんです。いま聞いている情報では、遺族や、亡くなった子どもたちや先生たちに余りにも不誠実だったと思います」

 東日本大震災で児童・教職員84人が死亡・行方不明となった石巻市立大川小学校の被災校舎前で、文部科学省の義家弘介(ひろゆき)大臣政務官が、児童の遺族10人ほどに囲まれた中で語り始めた。

“ヤンキー先生”こと義家政務官が
「市教委は不誠実かつ無責任」と指摘

大川小の祭壇で手を合わせる義家文科政務官
Photo by Yoriko Kato

 「今の教育委員会全体に関わる問題なんですけれども、この無責任体制のなかで、苦しむ者の心だけが取り残されていく。現行の教育行政のあり方は、あまりにも不誠実かつ無責任だ。事が起きたときに、根拠をもって責任を全うしていく体制を、地方教育行政法のなかで確立させていかなければならない」

 この2年間、真相究明を求め続けてきた児童の遺族たちが、義家政務官を食い入るよう見つめている。

 遺族が「ヤンキー先生」にとして知られる義家政務官に寄せていた期待は大きかった。今年、政務官が積極的に関わってきた大阪市立高校や名古屋市の私立高校のいじめ自殺問題に対する対応を、遺族たちは自分たちにもつながる問題だとして見守っていたのだ。

 「はい」

 「ぜひ、よろしくお願いします」

 石巻市教委の事後対応について政務官が踏み込んだ発言をするたびに、遺族たちが何度も頷く。義家政務官はさらに続けた。

 「事故当時は、教育長が存在していない。じゃあ誰がその指揮権を持つのか、あるいは教育委員会として遺族のみなさんや起こった事実と向き合うのか。指導主事が向き合っていたと報告を受けているが、指導主事は一役職であって、じゃあ誰が責任を持って決定し、その発言や見解につながっているのかが、現時点では明確でない」

 「事後的に教育長が任命され、本来ならまともに対応ができる体制になってはいる。けれども、重要な決定において教育委員会が招集されて、きちっとした報告がそこでなされたうえで、方針を決め、公文書を明らかにする等の話があったかというと、(ご遺族の)みなさんの受け止め方では、“なかった”わけですね?」

 「私も文部科学大臣政務官として、まずその事故の現場の検証と、それからその後の教育行政がどのように行われてきたかの検証、その両方は、しっかりと行わなければならないと、固く決意しております」

 教員経験からの実感と直感なのだろう。義家政務官の教育行政の課題に結びつけて、市教委の事後対応の問題を自らの言葉で語った。

 ここで、遺族たちの2年間を改めて簡単に振り返る。

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加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]

気象キャスターや番組ディレクターを経て、取材者に。防災、気象、対話、科学コミュニケーションをテーマに様々な形で活動中。「気象サイエンスカフェ」オーガナイザー。最新著書は、ジャーナリストの池上正樹氏との共著『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)でも写真を担当し、執筆協力も行っている。他に、共著で『気象予報士になる!?』(秀和システム)。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)。
ブログ:http://katoyori.blogspot.jp/


大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

東日本大震災の大津波で全校児童108人のうち74人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校。この世界でも例を見ない「惨事」について、震災から1年経った今、これまで伏せられてきた“真実”がついに解き明かされようとしている。この連載では、大川小学校の“真実”を明らかにするとともに、子どもの命を守るためにあるべき安心・安全な学校の管理体制を考える。

「大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~」

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