社長交代宣言のサイバーエージェント藤田社長「意中の人は絞れた?」への回答は…単独インタビューに応じた藤田晋社長 撮影:笛木雄樹

サイバーエージェント社長の藤田晋は、社長業の引き継ぎを本格化させている。次期社長の選定、育成のカギを握るのは、社外取締役として招聘された元日本ネスレ社長の高岡浩三と元リクルート副社長の中村恒一だ。社外取締役は、後継者育成計画でどんな役割を果たしているのか。藤田に聞いた。全5回連載の第4回。(名古屋外国語大学教授 小野展克)

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永守重信も散々失敗している後継者選び

 カリスマ創業社長が、後継者選びに苦労する例は多い。藤田もこう話す。

「他社では、外部からの優秀な後継者候補のアサインが行われることもありますが、その引き継ぎがスムーズに進まないケースも見られます。それほどまでに創業社長の引き継ぎは難しいのだと実感し、社外取締役の力を活用した後継者の育成と選定の仕組み化に取り組みました」

 例えば、2022年9月、日本電産(現・ニデック)の永守は自身の後継含みで日産から招聘した前社長の関を事実上の解任に追い込んだ。旧カルソニックカンセイ(現マレリ)元社長の呉文精、シャープ元社長の片山幹雄、日産元幹部の吉本浩之を含めると永守は後継者選びで4回も失敗したことになる。

 永守の失敗は、派手で分かりやすい。一方で、日本の大企業の中には、外からは見えにくい「静かな失敗」を繰り返しているケースも多い。

 社長が、自分の権力を温存するために都合の良い人物を引き上げるのが、よくある失敗の一つだ。株式の持ち合いで株主価値の追求が甘く、資金調達は銀行融資が中心で、利益の拡大より「何もしない経営」が求めることが、こうしたトップ交代を容認してきた。このような連鎖が、日本企業の停滞の一因となったことは間違いないだろう。

「内輪の論理」から脱却、外部からの目線で、社長を監視する仕組みとして注目されているのが、社外取締役だ。

 藤田は社外取締役(社外取)について、実は疑念を持っていたと言う。