サイバーエージェント社長の藤田晋は、2026年に会長に退き、新社長を社内から起用すると表明した。藤田は、残された3年間で、後継者をどう育て、選ぼうとしているのだろうか。藤田への単独インタビューで、希代の創業社長による後継者育成計画に迫った。全5回連載の第1回。(名古屋外国語大学教授 小野展克)
「これはまずいな」
藤田晋が後継者育成に乗り出した
藤田が社長交代を決意したのは、昨年、11年後をイメージした「藤田晋(60)」と書かれた社内資料を読んだ時だった。藤田は言う。
「これはまずいな、と思ったのがきっかけですね。僕が社長をやればやるほど経験値が僕に集中しその分、社長は他の誰にも代えられなくなってしまいます。他社でも、創業社長が後継者にバトンを引き継ぐのに難航しているケースが見受けられます。経営者仲間からは『まだ早いんじゃないか』という声もありましたが、過去の経験から10年はあっという間だと理解していたので、早く後継者育成に着手する必要があると考えました」
私が藤田の社長交代宣言に関心を持ったのは、藤田の社長交代のユニークな方法を伝え聞き、その狙いとやり方を深く知りたいと考えたからだ。藤田は、これから3年間にわたって、社長候補のメンバーを対象にボストンコンサルティングや早稲田大学が組んだ研修プログラムを実施する。さらに社長の選定には社外取締役の知見を重視し、独立したプロ経営者の視点も活用するというのだ。
藤田が指摘するように創業社長やカリスマ社長が後継者選びでつまずくケースは多々ある。
藤田の後継者選びは、単に希代の創業社長のユニークな取り組みというだけではなく、他の多くの日本企業のトップが後継者育成を考える際に、本質的な示唆を与えるのではないか。そう考えて私は藤田への取材を始めた。