かつての芸能界を考えるとしても、古くは映画スター、やや下ってアイドル歌手などは、彼らの存在によって食っていくことができる人のために大切に管理されていて、例えば簡単に「結婚」などできるものではなかった。

 生涯独身を保っているかのように見えた歌手や俳優が晩年になった時に、実は事務所のマネージャー役の一人が実質的に配偶者であったことが分かるようなケースもあった。

 近年は、芸能人の恋愛に対してファンが寛容になり、いわゆる「デキ婚(子どもができてからする結婚)」なども認められ、祝福されるようになった。しかし、羽生氏のように桁違いにファンが多くて、しかも人生の一時を彼と半ば一体化して過ごしてきたような感覚を持っているファンが少なくないと想定されるときに、いきなり結婚を発表することは、ビジネス判断として適切ではなかったのではないだろうか。

 ビジネス的な判断としては、例えば、お相手の方にチーム羽生の何らかの役割を与えて帯同し、場合によってはチームの中にカモフラージュのメンバーを混ぜるくらいの周到さが必要だったのではないか。

 そもそも、子どもができたのではない段階で、なぜいきなり結婚を発表したのだろうか。この判断には、謎が残る。

ストーカー行為や脅し、メディアと
アイドルも戦うべき

 仮に羽生氏が、アイドルは人気商売なので有名税的に注目を浴びるのは仕方がないけれども、自分はアイドルを商売にしていないアスリートなので事情が違う、と考えているのだとすると、認識が少しずれている。

 芸能人などのアイドルにも、触れてほしくないプライバシーの一線や、ここまでは報道されてもいいけれど、ここから先までやるようなら、あらゆる手段を導入してでも戦うという防衛ラインがあるはずだ。

 ここで羽生氏は、芸能人と一線を画するのではなく、むしろ積極的に彼らと共闘して、ストーカー行為や脅し、これを誘発しかねない行儀の悪いメディアを許さない世論の形成のために一肌脱ぐべき立場ではないだろうか。