「いい・悪い」で論じると、本人が望まない報道を行ったメディアや、本人たちや関係者に対して恐怖を与えるような行動や好奇の目を向けた人々が圧倒的に「悪い」。話が善悪で済むなら、結論はそれだけだ。

 ただ一方で、悪い人もいるのだという現実を踏まえた上で、もう少しうまくやる方法はなかったのかと考えたくなる。

「僕はアイドルじゃない」の
三つの問題

 情報が少ない中、筆者は、羽生氏のものとされる「僕はアイドルじゃない」という言葉に注目した。この言葉は、2016年に羽生氏が高校時代の同級生と交際しているらしいと報じられた時になじみの記者に「スケートとプライベートってまったく関係ないし、僕はアイドルじゃない」と珍しく感情をあらわにした時の言葉として報じられているものだ(『FRIDAY』12月8・15日号)。

「僕はアイドルじゃない」。羽生氏が今もそう思っているとするなら、以下の三つの点で理解に問題があったのではないか。

(1)アイドルではないという自己認識
(2)アイドルはビジネスであるということ
(3)アイドルにも守るべきプライバシーがあること

 いずれも、羽生氏に一人で理解し対応すべきだというには無理があり、周囲が十分サポートすべき現実問題だったのではないかと思う。超一流のアスリートであり、同時にアイスショー・ビジネスの開拓者でもある羽生氏といえども、まだ28歳の若者であり、いわゆる世間的な経験は乏しい。彼を助けることができるチームがなかったことが、残念に思える。