日本のウイスキーの
正しい使い方

 私が赴任したアフリカ某国の日本大使館で、現地人たちとどのようにして人脈を構築したかをお話していきます。

 現地の警察関係者と繋がることができたら、なるべく早い段階で、親しみやすい雰囲気を醸し出すために、レストランに招きます。この際には、事前に相手の趣味や家族構成などを秘書からお聞きし、それに基づいてプレゼントを用意しておくことが重要です。例えば、「ウイスキー好き」だと教えていただいたら、5000以下のウイスキーを買っておくのです。諜報の世界では、5000円以下であれば、受け取っても良いことになっております。

 日本のウイスキーは世界一まろやかですから、相手に「なんだこのウイスキー。こんなの飲んだことない。次、お前が日本に帰ったら、お金を渡すから買ってきてくれ」なんて言わせたら、もう占めたものです。「はい、もちろんです。あと、私は〇〇に関心があります。この方面で詳しい方がいらっしゃれば、ぜひご紹介ください」と、率直かつ丁寧にお願いすることで、もう完全に相手を取り込めます。

 警察関係者が名前を挙げた人物には、すぐに個別に電話をして、アポを入れるようにしていました。この際には、例えば警察庁に対して、「国家警察の薬物担当の課長とお会いする予定ですが、何かご提供いただける情報はないでしょうか」と、協力をお願いすることで、相手に与える情報を用意するのです。もちろん、情報は情報でもホームラン級でないと意味がありません。

 こうした努力の結果、警察庁からはアフリカ某国にいる麻薬カルテルの活動に関する重要な情報が得られたのです。これは、まさにお土産になる有益な情報となります。

 獲得した情報を持って、薬物担当課長との会談に臨むと、課長は驚きと興味を示し、「他にも情報はあるのか」とお尋ねきます。この際には、一度に全部渡さずに三分割にして、「まだあると思いますが、第二報が届き次第、迅速にご報告します」と、敢えて情報をじらしておくことで、再び会う機会を生み出し、お互いの信頼関係を深めることが可能です。

 人の懐に入り込むには、直接会う「頻度」をいかに増やすかということが重要です。もともと関心がなかったことでも複数回接触するうちに興味を持ち始めるという単純接触効果を応用しています。一度にすべての情報を与えるのではなく、小分けにして会う回数を増やす。人との関係を深めるためには、この方法も効果的なのです。