ビジネス環境や働き方が大きく変化する中、人と組織をめぐる課題は増えるばかりだ。近年、個人の学習・変化を促す「人材開発」とともに、「組織開発」というアプローチが話題になっている。入門書『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)は、注目のテーマだ。本記事では、これからの企業に不可欠な「人材開発」「組織開発」の第一人者であり、近刊『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の課題解決入門』(ダイヤモンド社刊)の著者でもある立教大学経営学部の中原淳教授に、ミドル層のキャリア再建について話を聞いた。第一回第二回第三回はコチラ】

「定年まで耐えればいいんでしょ」では無理すぎる、40代以上のミドル層がいますぐやるべきこと【立教大学・中原淳教授インタビュー】「働かないおじさん」化してしまうのは、本当に本人のせいなのか?(Photo: Adobe Stock)

企業の中で放置される、40代以降のミドル層

――近年、「働かないおじさん」という言葉も生まれていますが、企業の中での立場があいまいになってしまったミドル層の課題についてどうお考えでしょうか。

 特に男性に多いのですが、年をとるに従って他人からフィードバックしてもらう量が激減している、ということは確実に言えるでしょう。

 成長の実感や仕事のやりがいは、人との関わりから生まれるところが多いのですが、日本の企業では40代以降になると「俺はもういいよ」と、新しい挑戦や人間関係については諦めてしまう方が少なくありません。

 いや、でも「もういいよ」じゃないんです。

 人生100年時代ですから、仕事人生はおそらく最低65歳あたりまで、長くて70歳くらいまでは働く社会になります。今現在40歳の方でも、残り30年あるのです。

 ですので、「フィードバックレス」(他人からの耳の痛い指摘、ポジティブな承認すらもらえない)の状態においておくことは危険です。

 上司も、同年代や年上の部下の仕事ぶりには口を出しづらいから、「あなたは大丈夫だよね」などと言ってミドル層を放置してしまう。

 こうして、ミドル層の仕事についてはフィードバックがない状態が続くことになります。

 その行き着く先が、「働かないおじさん」という状況なのかな、と思います。

「働かないおじさん」とは、決して特定の性別を指す言葉ではなく「長いあいだフィードバックがない状態におかれて、学び直しがうまくすすまず、パフォーマンスと貰っている給与のバランスが悪い状態」のことを言うのだと思います。

――本人も周囲の人も「諦めている」という状況でしょうか。

 40代以降になってくると、気力や知力などいろいろなものが衰えてきます。

 このため、「もういいや、定年まであと15年耐えればいいんでしょ」という姿勢になる人もいます。

 ただ、ちょっと見積もりを間違えていますよね。くどいようですが、実際には、ゴールは65歳とか70歳だと思うのです。

 いずれにしても、残り10年とか5年になってくると、もう事実上は仕事を放り出してしまう人はいるでしょうね。

――仕事を放り出していても給料は保証されている状態ですね。

 日本企業の賃金体系でいうと、「働かないおじさん」というのは、パフォーマンスはどんどん下がっているのに、長期雇用、終身雇用なので、給料自体はそれほど減らされていない、という状態でしょう。

 今、企業は躍起になって、このような状態の人たちを何とかしようとしています。