円盤を引き揚げたら海が荒れ、
真っ二つに割れていた

 ガラス越し見物できるその不思議な円盤は、直径1.6メートル、厚さ11センチ。鉛色と錆色が入り混じり、ひと目で長い年月を刻んできたものであることがうかがえる。

 自然の造形とは思えないきれいな円形で、中央あたりで真っ二つに割れているのがいかにも物々しく映る。材質はよくわからないが、過去の調査によって鉄製であることが確認されているそうだから、やはり人工物なのだろう。

UFOの残骸か?ヤマトタケルの遺物か?千葉県・鋸山の麓に祀られる「謎の円盤」金谷神社に祀られている謎多き円盤  Photo by S.T.

 これは一体何なのか? 正体を探るべく社伝をひもといてみると、この円盤が引き揚げられたのは、1469(文明元)年6月某日のことと記されている。房総沖の海面の一部が不自然に光っているのを見つけた村人たちが、その正体を突き止めようと船で沖合へ出たところ、海底に沈む奇妙な円盤を発見したという。

 しかし、およそ1.5トンもある巨大な円盤だけに、引き揚げるのは容易ではない。そこで村人たちは、金山彦神を祀る金谷神社に祈願することにした。金山彦神は、鉱業や鍛冶など金属に関する技工を守護する神様だ。

 すると、途端に大嵐がやって来て、7日間に渡って海が荒れ続けた。荒天が去ったあと、再び村人たちが沖合へ出てみると、件の円盤は真っ二つに割れていたそうで、晴れて円盤を引き揚げることが叶ったのだという。

 この円盤の正体については誰にもわからなかったが、鉄製でありながら腐食していなかったことから、いつしか村人たちの間で不老長寿を祈る信仰対象となり、「鉄尊様」の愛称で大切に守られることになった。これが、金谷神社の円盤に秘められた背景である。