半導体 投資列島#8Photo by Yoshihisa Wada

日本の株式市場で評価の高い企業の一つが半導体の検査装置を手掛けるレーザーテックだ。2023年末から24年初にかけて上場来高値の更新が続いた同社の強みは、最先端の半導体製造技術「EUV(極端紫外線)」向けの検査装置で世界市場を独占していること。特集『半導体 投資列島』(全9回)の#8では、他の装置メーカーの追随を許さないレーザーテックの技術力の源泉、そして日本の“半導体復活の切り札”と目されるRapidus(ラピダス)への期待を岡林理社長が語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 大堀達也)

売上高と利益は7期連続で過去最高
“最先端”への投資マネーは細らない

――前期(23年6月期)は売上高、利益共に7期連続で過去最高でした。この間、半導体は市場環境が悪く業績が振るわないメーカーが多かった一方で、非常に好調だったことをどう分析していますか。

 当社は最先端の半導体技術である「EUV(極端紫外線=extreme ultraviolet)露光」を使ったパターンマスク(回路パターンが描かれた原板)の検査装置を手掛けています。その部分の売り上げ比率が非常に高く、ボリュームゾーンといえます。

 われわれの顧客である半導体メーカーの投資状況を見ると、最先端分野については開発投資も含めてブレーキを踏まない傾向があります。半導体メーカー間にも競争があり、最先端分野の投資をストップしてしまうと出遅れてしまうからです。

――それが半導体不況の中でも自信になっていると。

 そうですね。われわれのビジネス領域は、以前から市況の影響を受けにくいといえます。これが半導体への投資額にアップダウンがある中でも、順調に成長してきた理由です。

――前期は売上高1528億円の2.6倍に相当する4029億円もの期末受注残がありました。供給が追い付かないほど需要が高まっています。

 顧客の要望に応じて装置を必要なタイミングに届けることができていないことは問題です。解決のためには経営基盤の強化が必要です。そのための取り組みは行っていて、例えば、本社(横浜市港北区)から徒歩10分の場所に、本社の5倍程度の敷地を取得しました。クリーンルームを増設するなど、随時、生産体制の強化を図っています。

――今期(24年6月期)の業績見通しは。

 売上高は1950億円(前期は1528億円)、営業利益は670億円(同622億円)を見込んでいます。純利益は490億円(同461億円)という予想です。

――時価総額が急拡大しました。株式市場からの評価が非常に高い中で、株主の期待にどう応えていますか。

 常に顧客の要望に応えて、価値を提供し続ければ、結果として売り上げ、利益共に拡大します。その分は当社の株主に還元しています。それは前期の配当性向35.2%という比較的高い数字に反映されていると思います。

――オランダのASMLが手掛ける最先端のEUV露光技術に対応する検査装置を、世界で唯一製造できる技術力があります。強い製品を生み出す秘訣は。

次ページでは、ライバルメーカーが簡単にはまねできない検査装置を生み出すことができる理由、新たな成長領域、そして日本の“半導体復活”の期待を背負って立ち上がったラピダスとの協業の可能性について、岡林社長が答えた。