ハルビンに続きたいが…他地区も観光アピール合戦

 ハルビンの実績を見た東北各地は、激しい競争ムードに切り替え、小砂糖橘たちをハルビンに倣って「王女」「殿下」と呼ぶようにして、ハルビンに負けない超VIP待遇で迎えた。

 1月7日から黒竜江省を離れた小砂糖橘たちは、吉林省の吉林市、朝鮮族自治区の延辺州などを訪問したが、その旅行の様子を伝えるネットのライブ報道はいずれも信じられないほどのアクセス記録を作った。一例として、新華社通信の小砂糖橘たちに関する報道には6000万人ものアクセスがあった。

 その人気ぶりを見て慌てたのが、遼寧省瀋陽市文化・旅行・ラジオ・テレビ局(以下、文旅局)だ。局長はネットを通して、東北の旅行を終え広西に戻る際、ぜひ瀋陽の故宮、おいしい鶏の料理、面白いロボットとの遊びも忘れずに楽しもうと小砂糖橘たちに熱烈なラブコールを送り、瀋陽への途中下車を熱心に求めた。

 一方のハルビンと広西も、これらの追撃を手をこまねいて傍観してはおらず、鮮やかに次の作戦に突入した。

 小砂糖橘たちがハルビンで熱烈にもてなされたことに対する感謝の気持ちを表すために、広西チワン族自治区政府はハルビン市民に200トンの砂糖橘を贈呈した。それを受けた黒竜江省とハルビン市は黒竜江とウスリー川(烏蘇里江)に挟まれた撫遠市で栽培された新鮮な蔓越莓(クランベリー)を返礼として10万箱送り返すことに踏み切った。さりげなく、しかし効果的に、地元の特産品をアピールしたのだ。

 それだけではなく、広西は、有名観光地200カ所で、東北地域の身分証明書の所持者に対して入場券の免除または割引措置を導入したと発表し、氷と雪の世界にいる東北地域の住民に、温暖な南方への観光訪問の誘致作戦を仕掛けた。

 これらの熱烈な観光支援措置の合戦ぶりを見て、その他の地域の民衆も焦り出した。

 まず長年、東北出身者が避寒地として注目してきた海南省に批判の矛先が向けられた。海南省の中でも、サービスが悪く、ぼったくりが横行する有名観光地の三亜市は23年年末から閑古鳥が鳴く状態が続いている。海南省文旅局の不作為が批判の的となってしまったのだ。

 新疆ウイグル自治区の文旅局はハルビンの観光客誘致作戦の成功を見て、自らをアピールする作戦に出たが、新疆の民衆から「新疆はサービスが悪く、ぼったくりもひどい。宣伝にだまされて来ないように」と逆に暴露作戦を展開され、ろうばいしてしまった。

「1978年改革・開放路線が実施されてから中国で最も地位が下がった都市」といわれる天津市の文旅局も「何もしない政府機関だ」と天津市の住民から容赦なく揶揄された。

 中国はこれから春節商戦に突入する。元日連休期間のビジネス合戦は、最大の商戦期間である春節商戦のウオームアップにすぎない。ハルビンの努力でかなりの点数を稼げた東北地域全体はまさに数十年に一度のビッグチャンスを手に入れたと認識し、準備万全で春節商戦を迎えるだろう。その他の地域の都市も負けない勢いで春節商戦に勝負をかけるに違いない。経済の停滞ぶりが濃厚な最近の中国で、ようやく明るい一縷の光が見えた気がした。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)