世界で話題になっているMOOC(Massive Online Open Course)。インターネットで中味の詰まった高等教育を受けられるしくみは、教育現場を急速に変えようとしている。

 また、MOOCでなくとも、現在アメリカの大学の教育はますますインターネットに移っており、教員と学生とのやりとり、学生同士の議論、課題の提出、採点などがすべてそれ専用プラットフォームの上に作られている場合もある。インターネットの便利さがどんどん教育のプロセスにも浸透しているのだ。

 こうしてオンライン教育が進むにつれて懸案になっているのが、学生を評価する際にどうやって効果的な判断を行うのか、フェアに採点するのか、そしてカンニングや盗作などの不正な行いをチェックするのか、である。

 アイパラダイムズ(iParadigms)は、こうした要請にいち早く応えるために設立された会社である。創設は1996年。きっかけは、カリフォルニア大学バークレー校の博士課程に在籍する学生が、論文をピアレビュー(学生同士で論評し合う)できるしくみを作ろうとしたことだった。

 そのしくみを作ったところでわかったのは、学生の15~30%が他人の論文から一部を拝借して自分の論文に組み込んでいることだった。その割合は、他の論文を「引用する」レベルを超えていたのである。

 こんな論文が提出されると、教員は盗作論文を採点するために無駄な時間を使い、一方学生は真の意味で教育の恩恵を受け損ねている。そう考えたその博士課程の学生、ジョン・バリーが論文のオリジナリティーを計測するために作ったのが、後にアイパラダイムズ社のターンイットイン(Turnitin)というサービスに発展するのである。

「デジタル指紋」によって
教員を悩ませる論文採点を簡素化

 ターンイットインは、学生が執筆した論文を分析した「デジタル指紋」を無数のドキュメントと照らし合わせて比べるしくみだ。同社のデータベースには、240億以上のウェブページ、2億5000件以上の学生による論文、11万件以上の出版論文のデータがあり、そこに同じパターンのデジタル指紋があるかどうかを確かめるのである。

 その結果が「オリジナリティーチェック」という機能で数字よって示され、引用を大きく超えて盗作になっているような論文は、ここで教員へ警戒信号が表示される。