野党「共に民主党」から有力政治家が離党し、党内分裂の様相

 議員襲撃事件が続いたことに加え、もう一つ与野党を悩ませているのが、内部分裂による党内の混乱である。

 前述のように、野党「共に民主党」では、党の重要人物であり、一昨年の大統領選挙で党の候補者の座を巡って李在明氏と争った李洛淵氏が離党し、新党を設立すると発表した。李洛淵氏の離党と新党結成についてはこれまでにも度々ささやかれていたが、遂に李在明氏との断絶を宣言した形だ。

 李洛淵氏は離党にあたり、現在の李在明氏と「共に民主党」を批判し、「汚れた過去は彼らで終わりにすべきだ」と強く語った。これは、「共に民主党」の中にも李在明氏に反感を持つ者が多いことを裏付けたと言える。今後、離党者が増えるのではないかと注目される。

与党「国民の力」も内部分裂

 一方、与党「国民の力」内部も足並みが乱れている。一昨年の大統領選挙では尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏と協力関係にあった、当時の党首・李俊錫(イ・ジュンソク)氏が新党結成を宣言したのだ。李俊錫氏は、スマートで冷静な答弁で左派を追い込む、次世代を担う人材として期待されていたが、次第に、尹氏をはじめとする党内のベテラン議員との対立が表面化。さらに「性接待疑惑」が報じられたことで党首辞任に追い込まれた。

 このスキャンダルはあくまでも表向きで、年功序列が根強い韓国において、台頭する若手が重鎮によってつぶされたのではという指摘もある。李俊錫氏が今回の新党結成に出たことで、若者を中心とした無党派層を取り込む存在となるのではと注目されている。

 さらに、現政権で尹大統領の右腕とされていた韓東勲(ハン・ドンフン)氏と、尹氏の信頼関係に亀裂が生じていることも、今後の政権運営や総選挙への影響が懸念されている。