デジタルコミュニケーションの変化

 かつてはメールでのやりとりが主流で、ビジネスメールでは、フォーマルなあいさつや締めくくりが慣習とされていた。しかし、今日ではチャットや短いメールなどが広まり、簡潔で直接的なコミュニケーションが一般的になっている。この変化により、従来のメールで期待されていた礼儀正しい言葉遣いや、礼儀正しいやりとりが大幅に省略されているのだ。

<リモートワークの影響>
 まず、リモートワークの普及で、オフィスでの面と向かってのコミュニケーションが減少した。これに伴い、非公式なコミュニケーションスタイルが増え、ビジネスマナーに対する意識が薄れてきている。

 例えば、ビデオ会議での服装や背景の選択など、従来のオフィス環境では考慮されなかった要素が新たなマナーとして求められているが、一般的に、簡略化、省略化の方向が強くなっている。

<時短かつ効率化したビジネス遂行>
 労働時間管理が厳しく言われるようになり、できるだけ効率的に業務をこなすことが求められるようになった。短く効率的に仕事を進めることが最優先なので、余計な作業はできるだけなくそうとする。それは相手にとっても同じなので、相手に不要な時間を使わせないような配慮が必要であるというわけだ。

 このようなことから、最後の返信を省くことは、現代のビジネス環境においては、不適切ではなく、タイムパフォーマンスから見ても正当化でき、相手にとっても余計な時間を費やさせない正しい行動である、と若手社員は考えているようなのである。

 ビジネス環境や時代が変われば、正しい行動も変わる。マナーの変化も歴史的にも珍しいことではない。

断られた→返信しない「メール1往復主義」の若手が増加中!タイパ重視の本末転倒

 例えば、会社の上司や先輩とタクシーに乗る際の席次などは、昭和・平成世代が新人の際に習った席順と現在正しいと見なされる席順は異なっている(右図参照:現在は1が上座で、末席が4となっているが、昭和末期に仕事を始めた筆者は末席が現在の3の位置だと教わった。クルマの進化によって、後ろの席の中央の席もラクに座れるようになったからではないか、といわれている)。

 またオンライン会議には、5分前ではなく、開始時間に入るというのも、会社によっては普通になっている。

 ただ、世代や会社によって、正しい振る舞いは大きく異なるから、過去の慣習を軽視することは、相手との長期的な関係構築において、不利益をもたらす可能性があることは認識しておかなくてはならない。

 最後の返信を返さないことについても、それが会社にとって得であるか、または本当にコストパフォーマンスの良い行動かどうかを再考したほうが良いと考えられる(もちろん、さらに時代が流れ、今の中高年が完全に引退する頃には、旧来の丁寧なビジネスメールのやりとりのようなコミュニケーションは、「不謹慎」「時代遅れ」「非常識」と糾弾されるようにさえなるかもしれない)。