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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

文革時代に巡り合った版画家
その思い出でひらめいた外国人観光客誘致の試み

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第148回】 2013年3月28日
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 文化大革命時代、黒竜江省の農村に強制移住させられた私たちの世代の人生には、想像以上の辛酸を舐めつくした経歴が残されただけではなく、意外な出会いもあった。

配属先は荒野開墾の最前線

 私の配属先は「北大荒」と呼ばれる荒野開墾の最前線だった。文革中は軍事制度に習うのが流行りで、私は松花江と黒竜江の間に位する綏濱県の荒野地帯にある38中隊に所属することになった。一番近い中隊は3.5キロ離れた36中隊である。町に出るには、その36中隊を通過しないといけない。この36中隊には、趙暁沫さんという北京出身の女性がいた。当時、彼女が羊を放牧していた。

 想像を絶する厳しい環境の中にいながら、私は当時詩人になる夢を見ていた。北京の美術専門の中学校を出た趙さんは画家になるのを夢見ていた。やがて私の詩も趙さんの絵も新聞に発表されるようになった。

 しばらくして、趙さんのある版画作品がすごく大きな話題になったのを聞き、その絵を載せた新聞を探し出してみたら、36中隊を通過する度に見慣れたあの小道の風景が絵にあった。小麦の収穫季節に、地平線まで伸び続く麦畑で作業する人たちに昼食を届ける馬車が走る。見慣れた風景だけではなく、見慣れた作業光景でもあった。趙さんが羊を放牧しながら見つめていた風景が、こうして美術作品になったのだ、と大きな感動を覚えた。

 こうして私はのちに中国の版画の三大流派の一つである、かの有名な北大荒版画と出合ったのだ。文革終了後、趙さんは北京に戻り、名門大学の中央美術学院で版画の修士課程を出た。そののち、人民美術出版社の専門誌『中国版画』の副編集長を務めた。数々の美術賞も受賞している。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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