「もしかして怒ってる?」SNSの不安あるあるに「ロッチと子羊」がズバッと回答

子どもから大人への階段をあがっていく思春期ともなれば、周囲との関係性に深く悩んでしまうもの。そんな悩みの解決にぴったりな哲学者の思想を紹介しよう。本稿は小川仁志、『ロッチと子羊』NHK制作班『『ロッチと子羊』で学ぶ中高生のための哲学入門:君のお悩み、哲学プラクティスで解決します。』(ミネルヴァ書房)の一部を抜粋・編集したものです。

どちらも取りたいときには
「アウフヘーベン」しよう

中高生の悩み
レギュラーの座を射止めるために頑張りたいのですが、仲間を蹴落とすようなレギュラー争いをするのが嫌いです。この矛盾を解決するためには、どうしたらよいでしょうか。

 このお悩みには、ドイツの哲学者ヘーゲル(1770-1831)に登場していただきましょう。

 彼の代表的な哲学である弁証法を取り上げたいと思います。弁証法は、この世の全ての矛盾を解消するヒントになる哲学だと言っていいと思います。

 ヘーゲルの考えを要約するとこんなふうになります。

「全ての物事には必ず正と反という矛盾する存在がある。でも互いを対立させず、アウフへーベンすれば高みを目指せるであろう」。

「アウフヘーベン」という言葉、気になりますよね?

 早速説明していきましょう。ある一つの主張があったとしたら、必ず、その反対の意見も出てきます。これが正と反という矛盾する状態だと思ってください。この二つの意見は、普通だったらぶつかって、平行線をたどるだけで相容れない状態です。

 ところが、アウフへーベンという論理を用いて互いを対立させないようにすると、どちらも納得する、合という結果にたどり着くことができます。つまり、アウフヘーベンは、正と反がぶつかる時に、反を切り捨てずに、それをうまく取り込んで合へと発展させることなのです。

 でも、お互いの意見を半分ずつ足しただけでは、合の位置は正と反の真ん中になるだけですから、いわゆる妥協ですよね。この状態だと、お互いに我慢してしまって矛盾が解消されません。いったいどうすればいいのでしょうか?

最終目的を考えて
問題を高みへ昇華させる

 アウフヘーベンは「止揚」などと訳されますが、元々は「持ち上げる」といった意味のドイツ語です。矛盾するものをさらに高い段階に持ち上げて解決することです。

 それでは、アウフヘーベンをわかりやすい具体例で考えてみましょう。あるクラスに個性が強い生徒がいました。発想はユニークですが、遅刻も多く、協調性はゼロ。クラスのみんなは困っていました。正の意見は、「とにかくみんなとなじませるべきだ」。それはごもっともですね。

 一方、対立する反の意見は、「その子の個性を尊重するべきだ」。これも一利あります。さあ、この矛盾をアウフヘーベンして解決に導いてみましょう。