慣れ親しんだ場所の方が
実力を発揮しやすい

 スポーツの世界では、ホームで試合をしたほうが、アウェーで試合をするときよりも有利です。ホームのほうが観客も味方になってくれますし、試合会場にも慣れているので、実力を発揮しやすいのです。

 こういう「ホーム効果」は、スポーツの世界だけでなく、ビジネスの世界でも見られます。

 カナダにあるブリティッシュ・コロンビア大学のグラハム・ブラウンは、ホームのほうが有利な交渉ができることを実験的に確認しています。

 ブラウンは84組の同性のペアを作ってもらい、コーヒーメーカーの売り手と、仕入れるホテルの担当者になったつもりで交渉をさせてみました。

 ただし、ホーム効果を高めるため、半数の人には先に実験用のオフィスに来てもらいました。そしてオフィスの入口に自分のネームプレートをつけたり、5つの椅子の中から気に入った椅子を1つ自分用に選んだり、12のポスターから2つを選んでオフィス内の壁にかざってもらったりしました。また、ホワイトボードに自分のスケジュールを書き入れたり、コンピュータにログインして、しばらくネットサーフィンをしたりしてもらいました。

 十分にそのオフィスに慣れてもらったところで、交渉の相手役を呼び、交渉をしてもらったところ、ホーム役は、コーヒーメーカーの売り手役に割り当てられたときにも、ホテルの担当者の買い手役を割り振られたときにも、どちらに割り当てられたときにも強気な価格交渉ができることがわかりました。結果は下の表のようになりました。

図_ホームのほうが強気の交渉ができる同書より 拡大画像表示

 ホームのほうが強気になれるということがよくわかる結果ですね。

 もし相手と交渉するとき、お互いにとってフラットな場所を選ぶのだとしたら、交渉場所には相手よりも早く到着しておくといいですよ。早く到着してその場になじんでおけば、完全には自分のホームではなくとも、ホームと同じような気持ちになれます。

 交渉ではなく、打ち合わせのときでも、たとえば待ち合わせ場所のカフェなどには、相手よりも早く到着するようにしましょう。そのほうが、打ち合わせの主導権を自分で握ることができます。