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逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―

其の38「論語」を読む。「信」とはなにか?
混迷の時代、人は信じあえるのか?

江上 剛 [作家]
【第38回】 2013年4月2日
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 吐き気がでるほど胸糞悪い事件が起きた。岩手県山田町で活動しているNPO法人「大雪りばぁねっと」が震災の緊急雇用創出事業の予算約8億円を使い切った挙げくに、被災者の雇用を打ち切ったというのだ。資金の使途には不透明、不明朗なものが多くあるという。

 ニュースで知る限りなので、私はこれが悪意のある詐欺事件なのかどうかは分からないが、このNPO法人が被災者のみなさんの心を深く傷つけたことだけは確かだろう。被災者のみなさんは彼らを信じて巨額の資金を託したのだ。それらの資金は被災者のために使われるべきものだ。NPO法人の代表は、悪意がないならきちんと説明責任を果たすべきだろう。

 山田町は刑事告訴に踏み切ると言っているが、早期に対処して真相究明をしなければ、同じように人の信頼を踏みにじるようなNPO法人がもっと出て来るに違いない。

 政府は、沖縄県の普天間基地を辺野古に移設する申請を行った。この申請の仕方がセコイ。突然、県庁に書類を持ちこんだ。不意打ちもいいところで、これでは沖縄県民の信頼を得られないだろう。もともとこの問題は、民主党政権の際、鳩山元首相が、普天間基地移転を「最低でも県外」と断言したことから迷走した。鳩山元首相は、あろうことか米国のオバマ大統領にも基地移転に関して「トラスト・ミー」と言ってしまった。そのためとうとう鳩山氏本人が「県外」ならず「圏外」に飛んで行ってしまった。

 NPO法人も鳩山元首相も人の信頼を裏切ったのだが、この「信」とは何か?この漢字は会意文字といい二つの意味ある言葉を合わせている。すなわち「人」と「言」だ。「信」とは人の言葉ということだ。

「信」とは人が神にかけて誓うこと

 漢字研究の泰斗、故白川静氏は、この「言」は神に誓う誓言だと解説する。すなわち「信」とは人が神にかけて誓うことなのだ。それだけ命がけの行為なのだろう。

 人は言葉によってお互いを信じあい、信頼するものなのだ。だから軽々にトラスト・ミーなどと言ってはならないのだろう。

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江上 剛 [作家]

えがみ ごう/1954年1月7日兵庫県生まれ。本名小畠晴喜(こはた はるき)。77年3月早稲田大学政経学部卒業。同年4月旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。高田馬場、築地などの支店長を歴任後、2003年3月同行退行。1997年に起きた第一勧銀総会屋利益供与事件では、広報部次長として混乱収拾に尽力する。『呪縛 金融腐蝕列島』(高杉良作・角川書店)の小説やそれを原作とする映画のモデルとなる。2002年『非情銀行』(新潮社)で作家デビュー。以後、作家に専念するも10年7月日本振興銀行の社長に就任し、本邦初のペイオフを適用される。


逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―

作家・江上剛氏は、その人生で2回も当局による強制捜査を経験した。その逆境にあって、心を支えくれたのが、「聖書」「論語」「孫子」などの古典の言葉である。ビジネス界に身を置けば、さまざまな逆風にされされることも多い。どんな逆境にあっても、明るく前向きに生きる江上剛氏が、柔術ならぬ“剛術”で古典を読み解き、勇気と元気の“素”を贈る。

「逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―」

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