世界の金融センターだったのは昔の話
今の香港は「兵馬俑」

 だが、多くの人は、このローチ氏の発言に既視感があった。

 昨年夏以降、中国のSNS上で「香港は今や『かつての世界金融センター』であり、すでに兵馬俑(へいばよう)などと同じ『遺跡』になった」という発言が出現、「香港世界金融センター遺跡」論が大きな議論を呼んだからだ。

 特に、香港株をにらんできた中国人個人投資家たちは辛辣(しんらつ)だった。金融インフルエンサーは、香港の株式市場インデックスであるハンセン指数は、「とっくに(香港の主権返還時の)1997年のレベルに戻った」と述べ、「遺跡と呼ばれても仕方ない」と強調。「香港株はもう空売り状態。何年も値下がりが続いている」とか、「香港株は買ってはだめだ、買ってはだめだ、買ってはだめだ。大事なことだから3回言った」という否定的な声が続いた。

 中国国内で飛び出した罵詈(ばり)雑言に慌て、香港立法会では議員から、「中国のネット企業に働きかけて書き込みを削除するか、ブロックさせるべきだ」などという、日頃は「ネットの自由」を標榜(ひょうぼう)している土地としては本末転倒な発言も飛び出した。

 だが、実際にコロナ以降の香港株式市場の不振ぶりは香港人ですらも逃げ出すほどで、「いまさら香港株に投資するなんてアホだ」などと公言する香港人インフルエンサーも少なくない。新聞の投資コラムでも堂々と米国株投資へとくら替えを勧めていたりする。