この連載でわれわれが進めてきた中国語の学習方法は、基本的にインターネットに依存するものであった。それは、中国のインターネット・サイトがかなり充実してきたために、可能になったものである。10年前であれば、こうした方法での学習は進められなかったろう。以下で見るように、インターネットの世界には、新しい中国が出現している。
中国のインターネットは、「リープ・フロッグ」
中国の政府系機関である中国インターネット情報センター(CNNIC)が1月15日に発表した報告書によると、2012年末における中国のインターネット利用者は、5億6400万人に上った。これは、世界1位だ。
第2位のアメリカが2億5000万人程度、第3位の日本が1億人弱であることと比べて、圧倒的に多い。
普及率は、42.1%になった。地域別に見ると、都市部が72.4%に対し、農村部では27.6%に留まっている。
中国のインターネットユーザー数が世界最大となったのは2007年のことであったが、その後も成長が続いているわけだ。全体としての普及率が5割に至らず、しかも総人口が多いのだから、今後も大きな成長の潜在力を持っていることになる。
なお、中国の場合には、携帯電話からの利用者が全体の74.5%と、きわめて高い比率を占めている。
中国における情報通信メディアは、「リープ・フロッグ現象」を起こしていると考えることができる。「リープ・フロッグ」(蛙飛び)とは、遅れて発展した国が、先に発展していた国よりも、新しい技術の恩恵を受けることだ。イギリスより遅れて産業革命を実現したドイツが、蒸気機関の時代を経ずに電気を利用できたことが、その例だ。
中国は、固定電話の時代を経ずに、直接に携帯電話の時代に入った。
メディアについても、中国は、新聞、雑誌、書籍などの印刷物を飛び越えてインターネットの時代に入ったと考えることができる。国土が広いことも、印刷物に比較した場合のインターネットの有利性を高めているだろう。
新聞発行部数を見ると、2010年において、中国が1億1078万部に対して、日本が5043万部だ(なお、アメリカは4857万部)。インターネット利用者数では中国は日本の5倍以上であるのに対して、新聞では約2倍にしかなっていない。人口1人あたりで言えば、中国は日本の5分の1程度でしかない。これを見ても、中国がインターネットに偏っていることが分かる。
中国は選挙のない独裁国家であるため、政治的な不満や政府批判の情報がインターネット上に現われる。このため、政府は、インターネット上の情報を統制し、管理を強化している。第1に、国外のサイトに対するアクセスがブロックされる。また、国内のサイトに対しては、「金盾工程」(金盾プロジェクト)と呼ばれる検閲活動を行なっている。