国会議事堂写真はイメージです Photo:PIXTA

政治とカネの問題が常に取り沙汰される我が国。彼らが使っているカネは、我々の税金なのだが腹落ちする使途理由を説明されることは少ない。一方、スウェーデンではそのような政治家の振る舞いはあり得ないのだそう。カネをかけない政治はどのように実現されているのか。※本稿は、クラウディア・ワリン『あなたの知らない政治家の世界 スウェーデンに学ぶ民主主義』(新評論)の一部を抜粋・編集したものです。

議員の支出報告と請求書は保管され
市民は誰でも閲覧可能

「ここには、いつもジャーナリストが出入りしているんですよ」と、礼儀正しく笑顔で私に挨拶してくれた事務員が言う。この建物の小さなロビーは、制服を着た警護官に守られている。

 私たちは一緒に、国会議員全員の支出と経費を管理している機関である「議員サービス」の館内を歩いた。

 廊下の突き当りには長い書棚のある部屋があり、ここに、議員の支出報告と実際の請求書などが保管されている。それぞれが大きなファイルに仕分けされており、全員、つまり349名の名前が書かれている。国会議長のペール・ヴェステルベリ氏のフォルダーもある。議長は、この国においてもっとも高位となる公職だ。スウェーデンの序列では、議長は首相より上に位置しており、議長の上にいるのは国王だけである。国王は正式なプロトコールでは国の元首であり、首相を任命したり解任したりする。

 市民は誰でも、ここに来てフォルダーを閲覧することができる。情報開示は、電話、インターネット、ファックス、メールでも請求できる。

「私たちがこういう仕事をしている主な目的は、税金が国会議員によって浪費されないようにすることです。国会議員は税金を効果的に使うために議員をしているのであって、私たちは、そのためのルールに従ってほしいと願っています」

 このように話したのは、部署のトップであるアンナ・アスペグレン氏である。議長やその他の国会議員が提出した支出報告は、「詳細にわたってこの部署に所属している10名の職員が審査している」とアスペグレン氏が説明してくれた。

「国会議員が不完全な報告や特定の請求書について不正確な情報を提出した場合は、電話をして説明を求めます」と職員の一人が言ったが、報告に不正確な部分があることは稀だという。

航空券もホテルも議会が予約
議員のカラ出張などは不可能

「議会のメンバーは、正しいことをしようと努めています。不正を働こうとは思っていないというのが私たちの印象です。ですから、口論になることはありません。整合性がなかったり、不正確だと思われる部分があればその議員に連絡をしますが、ほとんどの場合、『間違いを指摘してくれてありがとう』と言われます。とくに間違えを見つけるのは、ここに出入りしているジャーナリストですからね」と、アスペグレン氏が話してくれた。