職員が声を上げやすくなった
「ハラスメント条例」の影響

 なぜ議員や首長への自治体職員からのハラスメント告発が相次いでいるのか。これはおそらく、最近になってハラスメントが増えてきたからというわけではなく、これまでは我慢してきた職員たちが徐々にではあるが声を上げやすくなっているからであろう。

 別の町でハラスメントが報道されることにより、「同じようなことが自分の町でも起こっている」と気づくきっかけとなる。こう考えると、今後も同じようなハラスメントの告発は各地で起こりそうだ。

 岐南町と東郷町の場合で顕著なのが、被害者が複数で証言が大量にある点だが、もし被害者が一人や少数だった場合、町長に対して同じように声を上げられていたかはわからない。複数だからこそ問題が揉み消されず、表面化しやすかったのではないだろうか。

 また、自治体職員(公務員)の被害という点について考えてみたい。

 近年、「ハラスメント防止条例」を制定する自治体が増えている。地方自治研究機構の調査によれば、今年3月29日に制定されているハラスメント防止条例は全国で52ある。

【参考】ハラスメントに関する条例(地方自治研究機構)
http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/066_harassment.htm

 自治体によって詳細は異なるが、議員から職員へのハラスメントを念頭に置いたもの、あるいは議員間のハラスメントを防止するためのものが多い。

 たとえば今年3月に制定された鴨川市議会の条例では、「ハラスメントは、相手の人格及び尊厳を侵す人権問題であり、被害者の心身に影響を及ぼし、職務への支障にもつながり、ひいては市民サービスを低下させ」るものと定義されており、重要な問題と認識されていることが文面からもうかがえる。

【参考】鴨川市議会ハラスメント防止条例の制定について
https://www.city.kamogawa.lg.jp/uploaded/attachment/15693.pdf