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2030年のビジネスモデル

100年の時間軸を持った金融とは?――鎌倉投信が育む「希望の金融」

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第5回】 2013年4月25日
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 確かに、運用パフォーマンスは顧客と運用者が一緒に作るものなのだ。鎌倉投信の顧客は、大震災後の暴落局面でも早急に解約を求めたり、資産の目減りを極端に心配したりした人は皆無だったという。

 「その時々の感情に流されて解約したり購入したりする投資家が多ければ、質の高い金融商品にはなりません。どういった性質の投資家と共に歩むかが何よりも大切です」と鎌田さんは言う。鎌倉投信の個人投資家たちは株主利益を追求するいわゆる「モノ言う株主」ではない。投資先企業に対して受益者としての権利を主張するのではなく、むしろ投資家自身が投資先企業に対して何ができるかを考えるという姿勢を重視している。

社会を変えるメディアとしての投資信託

 鎌倉投信の本社屋は、鎌倉の人里の中に隠れ家のように存在している。築85年の古民家を改修した建物で、ゆったりとした時間が流れていく風情の中にある。それは生き馬の目を抜くような金融の世界とはほど遠い世界にみえる。「なぜこんなところに」という質問に対し、鎌田さんは次のように答えた。

 「私たちの投資信託『結い 2101』は、100年後の次の世代に通じる価値を作ることを目指しています。この事業をどこでやるかが非常に大事だと考えました。場所は思想信条を反映するからです。創業メンバーは誰一人として東京のオフィス街のビルでやりたいとは言いませんでした。鎌倉は、自然、伝統文化を重んじる一方で、武家幕府をつくったり日本で初めてナショナルトラストをつくったりしたような革新的な土地柄です。その佇まいの中に私たちの本社を求めました。古くからあるものを大事にしながら新しいものを創造し、人の成長を促す場所でありたいと思っています」

鎌倉投信の本社屋

 

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齊藤義明
[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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