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山田厚史の「世界かわら版」

TPPという外交敗北
守れなかった農業の聖域

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第34回】 2013年4月25日
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 カナダ、オーストラリアとも事前協議がまとまり、日本は7月からTPP交渉に参加する、という。だが、どんな合意に至ったか政府は明らかにしない。日本に不利な条件が盛り込まれた可能性が高い。

 先に合意した米国との事前交渉は、日本車への関税を当面存続することを認めた。カナダ、オーストラリアにも同様の約束がなされたようだ。だが、見返りに日本の農産品に特段の措置がなされたわけではない。つまり、すべての分野が交渉のテーブルに乗る。

得意分野は事前交渉で封じられ
不得意分野は本交渉で「市場開放」

 得意分野は事前交渉で封じられ、不得意分野は本交渉で「市場開放」が迫られる。

 政府内部では「農業5品目の関税をすべて守るのは極めて厳しい」という声が漏れている。安倍首相は「守るべき国益は守る」と繰り返すが、何を根拠にそう言えるのか。

 TPPは事前協議で早くも外交敗北が濃厚になった。取り繕っても不都合な真実はいつかバレる。7月からの交渉参加で、日本の不利益が次々と明らかになるだろう。

 「TTPで安倍政権はつまずくかもしれない」。農業議員からそんな声も出始めた。

 政府関係者はこう指摘する。

 「5品目のうち何を守るのか。例えばコメを守るが小麦は諦める、という選択を迫られる局面が出てくるのではないか」

 関税撤廃はTPP交渉の一部でしかないが、安倍政権にとって重要な政治案件だ。関税は分類項目が約9300に及ぶが、WTO交渉などでその90%が撤廃されている。TPPでは残る10%をおおむね3%以下まで減らそうという交渉が進んでいる。

 そこまで下げるとなると日本の「聖域」は崩れてしまう、というのだ。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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